〜幕間〜 世界の歪みは緩やかに
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として経営に携わってきた経験からの判断であった。
たった一人の例外であるあの男の来訪を除けば、それでもこの条件は破格に過ぎる。
じっと冷やかな眼差しで高順を見る少女は、ふっと息を漏らして少し笑う。
「分かりました。その条件でお願いします」
ほっと一息ついて少女と握手をし、楽屋に招かれて進んで行く。
どのような技術なのか。冬を、大自然を操るなど妖の所業ではないのか。
緊張と期待から心の臓が跳ねるが、高順はそれらを抑え付けて扉を開け、一つの部屋に進み入る。
そこには先ほどの胸の無い少女が立っていた。
「ふーん。あんたがあの店の店主なのね。……さっそく冬を起こす方法を説明するわ」
†
高順は少しだけ気分が沈んでいた。
冬を起こす素養が無い。それがただ一つの事実だったのだ。
聞くところによれば、彼女の冬を呼ぶ技術は特殊な書物により得たモノで、だれかれ構わず使えるモノでは無いらしい。
現に彼女の姉妹で冬を呼べるのは次女である胸無しの少女のみ。
交渉の条件は教える、だったので無料での打ち上げについても確定させられた。
つまりあの眼鏡の少女はこれを見越していたのだ。
ただ……彼には一人天使が現れた。
桃色の髪のほわほわとした雰囲気を纏った女性が、
「ねぇ、ちーちゃんの力があったらおいしいモノたくさん作れるんですよね? じゃあ暇な時に手伝ってあげるっていうのはどうかな〜?」
願っても無い事を言い出したのだ。
嫁入り修行として料理の数々を、そして店の呼子にも使えば宣伝にも抜群、として三人とは大きな契約が成立した。
対価として一つの簡易料理を大量生産する事になったが。
それは小麦粉等と乾燥果実の欠片を混ぜて固めた日持ちのする食べ物、『かろりーめいと』という料理であった。差し入れとして持って行くと大層気に入ってくれたようで、持ち運びにも便利なため移動の多い彼女達には助かるとのこと。
ただ、猫耳軍師が仕事の合間に大量に食べて少しふくよかになった事を伝えると身震いしていた。
対価は相応だったがこれで封印された料理、『あいす』を限定生産だが作れる。他にも冷却しなければいけないモノはある程度作れる。
その事が頭に浮かび高順の表情は自然と綻んだ。
軽い足取りで帰路につき、支店である「娘娘 二号店」に着いた高順は不可思議なモノを見つけた。
店の、今日は取材の為に閉店しているはずのその扉の前に小奇麗で小さな服を纏った少女が蹲っていたのだ。
確かにこの街は覇王の恩恵によって暴漢も不埒な輩も少ないが、さすがに少女がこのような逢魔が刻に一人でいるのはおかしい事である。
「あの、大丈夫ですか? 私の店は今日は閉店なので開けられないのですが」
高順の言葉にばっと顔を
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