第一部
第一幕 畜生中学生になる
第一幕 畜生中学生になる
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あて、大きく胸を逸らし、力強く息吹く様に声を発していた。……これは、『歌』か。
人間には、明らかに生きるために必要のない行動をとったりする。その一つが『歌』だ。
何らかのメロディに合わせて、決められたセリフを口ずさむ。
概念としては知ってるし、テレビでも聴いたことがあるが、実際に生で聴くのは初めてだ。
「みんなみんな生きているんだ」
「………………」
なんつーか。
そんなに悪くない。
というか、いい気分な気がする。
森ではよく鳥の連中が甲高い音で喚いていたが、これはそんなものとは比べものにならないほど、俺の心に響いてくる……そんな感じがした。
「友達なーんーだー。……ふぅ」
声が止む。どうやら、これで終わりらしい。なんとなく名残惜しく感じてしまった。
歌い手は軽く頬を上気させ、耳からヘッドホンを外し首にかけると、気持ちよさそうな表情を浮かべる。……と、そこでそいつは俺に気づいたらしい。
「ケロ! あなたはだれ!」
「あ、ああ。俺は今日からここに来た──」
「ケロ! 転校生さん!」
「……まあ、みたいなもんかな」
大分違う気もしなくはないが、訂正するのがめんどくさい。
何やらケロケロとよくわからない相槌をうつそいつをじっと見てみる。
スカートとかいう、いかにも寒そうなもんを着けてることから、そいつが人間のメス……女だということがわかる。
『元』畜生の俺には人間の美貌云々についてはよくわかないが、本能? 的に見ててそこまで不快になるようなツラではない。むしろ和む? 部類だ。
背はかなり低い。人間は女のが小さいらしいが、それを加味しても更に小さい気がする。大きなヘッドホンも、そう見えさせる要因の一つだろう。
「ケロケロ! じゃあ寺子屋学園にようこそ!」
「お、おう」
てか、さっきからうるさい。背丈に反比例でもしてんじゃねーかってくらいデカく響く声。歌として聞く分にはいいかもしれんが、こうやって喋ってる時はもう少し小さくできないもんだろうか。
……と、そんな俺の気持ちが通じたらしい。女は慌てて両手で自分の口を塞ぐ。
「ケ、ケロ。ごめんなさい。うるさかったですよね? ちょっと切り替え忘れてました」
切り替えって、お前はロボットか何かか。
「今のは、『歌』ってやつなんだよな?」
「ケロ!? 聴こえてました!?」
「…………そりゃあ、あんだけ大きな声を出されれば」
「ケロォ。ヘッドホンしてたのにぃ」
「…………いや、声の大きさはヘッドホン関係ねーだろ?」
「え? …………あっ!?」
何? 今気づいたのかよ?
なんつーか……頭の残念なヤツだ。
「……ケロロ。恥ずかしい」
「あ? 何が恥ずかしいってんだよ」
つか、俺には恥ずかしいというもの自体未だによくわからん
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