第一部
第一幕 畜生中学生になる
第一幕 畜生中学生になる
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んなとこまで来たが、その正体がトチ狂ったミミズとは、オレも運が無いぜ」
……一体何だ、この鳴き声は。
その鳴き声には意味があった。
あの生き物と同類のもの(その割りには高さも大きさも全然違うが)のようで、あまりに複雑で規則とも言えないような規則性の音である。だが、何故だかその複雑な音が何を表現しているのか、俺にははっきりわかった。
「ほう。言霊を感じることができるか。しかも知力も他の畜生と比べたらずば抜けているようだ。ちょっとした化け物だな」
そう鳴いて、またケッケッケと笑いだした。
体温は感じない。だから、生き物ではない。どこから発せられているのかもわからない鳴き声。あまりに気味が悪い。
疲れきった身体にムチをうち、なんとか臨戦態勢を整える。
「無駄だ。お前じゃオレは殺せない」
「シャア」
殺す?
つまりこの何かは生きているのか? 生きるための最低限の体温も発せずに?
「この程度の情報で思考までするか。少し修行すれば、言霊や呪術も操れそうだ。そうなりゃ、八岐大蛇再来だな。ケッケッケ。まあ、そんな暇はないがな」
「!?」
突然俺の身体が光を発した。
なんだ? 一体何が起きた?
「オレは『呪い』だ」
「シャア」
呪い? なんだそれは。
俺は少なくともそう表現されるような生き物を知らない。
身体が熱い。
夏の一番暑い時よりもさらに熱い。
「今から呪いであるオレはお前に、死ぬより辛い、生きるよりも笑える、そんな呪いをかける」
熱い。
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!
「シャァアアアアアアアア!」
次に目が覚めた時俺は人間になっていた。
寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い寒い。
「ガチガチガチガチガチガチ」
噛み合わない奥歯が、無機質な音色を奏でる。
寒い。死ぬほど寒い。
まだ四月もまだ頭。ボチボチ起き始めるやつもいるとは言え、『元』変温動物からしてみれば、あまりに寒すぎる。
「お前大丈夫か?」
そんなことを言ってくる男。毛むくじゃらでマウンテンゴリラに良く似たそいつは驚くことに、『今』の俺と同じ人間らしい。
「これが平気に見えるんなら、眼球取り替えた方がいいぞ?」
「…………一応、私は今日からお前の担任なんだが」
男はそう言って溜息をつく。
「担任だからなんなんだよ」
「はあ。まあ、そういうのもゆっくり学んでいけ。ここは、そのための場所だ」
学ぶ……ねぇ。
俺が人間になって、気がつけば既に半年を優に超えていた。その間、別段何を勉強したわけでもない。
人間になったその時には、最低限の言語と知識が頭の中にあった。
細かい理屈についてはわからないものも多々あったが
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