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さんすくみっ
第一部
第一幕 畜生中学生になる
第一幕 畜生中学生になる
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、真に感謝をし伝えた『ありがとう』は、時に何万、いやそれ以上の意味を持つ言葉になることもある。……そういう意味では『詩』の一種と言ってもいいのかもしれない」
「『詩』……」
 ゴリラが言っていることが、なんとなくわかった気もする。そして、その感覚に覚えもある。
「習うより慣れよ、だ。どんな経緯にせよ、お前は折角人間になったのだ。絶対に機会はあるからどんどん使ってみるといい。そして、自分なりの答えを模索してみろ。そして、できることなら、その答えを私は聞いてみたい」
「……質問してもいいか?」
「なんだ?」
「あんたは、さっき『いただきます』の説明の時に、米に感謝をすると言った。それだと矛盾が起きないか?」
「……なぜそう思う?」
「米は生きていない。感謝なんてもんされても知覚できない。ある意味では、米を作った奴やお前のかみさんだってそうだ。お前がここでこそこそと、感謝をしたところで、物理的に聞こえるはずがない」
「…………ああ、お前の言ってることはわからんでもない。……そうだな」
 ゴリラはとりあえず持っていた箸を置き、ズボンのポケットから携帯を取り出す。……今時折りたたみかよ。
「何をする気だよ?」
「私は携帯を電話をする以外の用途では使わんよ」
 ゴリラは何度かボタンを押した後に、携帯を耳に持っていく。すると、数秒もせずに繋がったらしい。
「ああ、私だ。今大丈夫か?」
「誰にかけてんだよ?」
「私のかみさんだ」
 かみさんだぁ?
「少し私の生徒と話をして欲しいんだが。ああ、ありがとう」
 そう言ってゴリラは俺に携帯を渡してきた。
 わけもわからんが、とりあえず受け取ることにする。
「……代わったぞ」
『いつも主人がお世話になっています。妻の明子と申します』
 少ししゃがれているが、とても優しい声だった。
「……別に世話はしていない」
『フフフ。いえいえ。そんなことはないですよ。きっと』
「…………」
 まるで状況が掴めない。ゴリラは俺に何を話せというのか。…………いや、それはわかってる。わかってるが意味がわからん。何故こんな馬鹿なことをしなくちゃならん。
 俺はゴリラを見る。その表情からは余裕すら伺える。それはなんとなくムカついた。
 ……わかったよ。聞いてやるよ。
「今、ゴリラが何を言ったか聞こえたか?」
「ゴリラ……フフ。確かに動物園にいそうな顔ですよね」
 わかるわけない。
 あまりにも馬鹿らしい質問。
 このかみさんってのがどこにいるかは知らんが、少なくともゴリラの小さな声が聞こえる範囲にはいない。そう。わかるわけが──
『いただきます』
「!?」
 お、おい。
『主人はそう言ったのでしょ? いただきますって』
 なんだ。こいつは一体何を言っている?
「き、聞こえたのか
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