始まり
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10時に会は終わって、今12時。私はベッドに入っている。ベッド脇の照明だけをつけた部屋が明るく感じる。もう30分くらい寝ようとしているのに全く寝られない。しようがないから本でも読もうとベッドを出て本棚に向かった。小さい頃から読んでいた本、最近買った本、全てこの本棚に収まっていた。その中から私は塔矢行洋詰碁選を取り出した。今読む気分ではなかったが、最初に目に入ったのがそれだった。公宏が私の家を訪れた時、この本を見て「懐かしいなあ」と言ったのを憶えている。
「公宏も持っていたんですか?それ」
「この本にはいろいろと思い出があってね。中学の学祭の時のことなんだけど、囲碁部の出し物として詰碁をしていたんだ。その時の一等賞がこれ」
「そうだったんですか」
「ほら、前言ったろ。進藤君がその学祭に来て、当時の塔矢アキラレベルの難しい詰碁を難なく解いたこと」
「そういえば・・・」
「あの時は真冬のプールに入らされそうになるし、大変だったよ。まあ加賀も冗談で言ったんだろうけど」
・・・やっぱりヒカルはおかしい。知れば知るほど混乱する。ヒカルが碁を始めたのは小学6年生の12月。公宏が言っていた学祭は1月。一から碁を始めてたったひと月で、そのレベルの詰碁が解けるものなんだろうか。それに学祭の前に、ヒカルは塔矢さんと対局して勝っている。あの時の塔矢さんの目が忘れられない。
―指導碁をしていた―
全く変な話だ。ヒカルのことになるといつも頭がこんがらがる。初めて会った時だってヒカルはおかしかった。あの反応は、普通じゃない。
「あー、もう」
難しいことは考えたくなくて、詰碁選を棚に戻し、代わりに小学低学年の時に読んでいたファンタジー小説を手にベッドに戻った。
ヒカルのことが気になってしようがない。その気持ちを消したかった。
ファンタジー小説は面白かった。そのせいでさらに目が冴えたのか、それから眠りにつくまでさらに30分かかった。
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