第三章
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第三章
けれど傘をさしてだ。にこにことしていたのだ。僕はそれを見て皆に言った。
「あのカップル」
「何だありゃ」
「雨でも雪でもないのに傘さして」
「おかしいのかね」
「やばい薬やってるのか?」
こんな言葉まで出た。とにかくおかしな二人だった。
それで気になって七人で彼等を見た。するとだ。
よく耳を澄ますとだ。こんなことを言っていた。
「星が降ってくるからね」
「だから傘をさすんだね」
「そうよ」
女の子の方から言っていた。見れば大学生の感じだった。はしゃいでそれが許される年頃だ。それで馬鹿を言っているのかと思った。
「だって。こんなに奇麗な星空じゃない」
「あっ、確かに」
男の方も彼女の言葉に頷いた。そうして上を見上げるて実際に星を見る。それにつられて僕達も星空を見た。するとその星空は。
「奇麗だよな」
「ああ」
「かなりな」
思わず息を呑んだ。そこまで奇麗な星空だった。
「こんな奇麗な空なんてな」
「滅多にないよな」
「澄んでるしな」
「そうか」
ここでだ。僕はわかった。
「こんなに奇麗だから星が降るっていうんだな、あの娘は」
「それでか」
「それで傘もさしてか」
仲間達もここで気付いた。
「最初は何だって思ったけれどな」
「そういうことか」
「成程な」
これで僕達はわかった。あのカップルが何で雨でもないのに傘をさしているのか。それでわかった。
わかったうえでまた二人を見る。今度は男の子が言っていた。
「この傘だけれどさ」
「うん。どうするの?」
「あげるよ」
にこりと笑って女の子に言っていた。
「この傘。あげるよ」
「くれるの?」
「クリスマスプレゼントにさ」
それにだと。彼女に言っていた。
「あげるからさ」
「けれどクリスマスはまだ先だけれど」
「クリスマスの時にもプレゼントするよ」
傍から話を聞いていて。随分気前のいい彼氏だと思った。傘なんて値段は安い。けれどそこに心があるならかなり高いものだからだ。
「それでいいよね」
「有り難う」
彼女もにこりと笑って応えていた。
「それじゃあ今はこの傘をね」
「どうぞ」
こんな話をして二人仲良く楽しんでいた。僕達はそんな二人をずっと見ていた。そして二人が僕達の目の前から消えた後でだ。
リーダーがだ。皆に言ってきた。
「あの二人にするか?」
「曲の主人公?」
「あの二人に?」
「ああ、それでどうだ?」
こう僕達に言ってきた。
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