第三章
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第三章
「誰かを幸せになんてね」
「できないから。それでなの」
「殴られてもそれ位で諦めるつもりはなかったよ」
僕はまた話した。
「それでだったんだ」
「それであの後すぐに立ち上がったのね」
「うん、それでまた言って」
「あれには驚いたわ」
彼女はこうは言ってもだ。今はにこやかに笑っている。
「すぐに立ち上がったしね」
「そうだったんだ」
「それでまた私と結婚したいって言って」
「親父さんもそれで認めてくれたしね」
「そうよね。顔を崩してね」
「そして今だよね」
僕はまた話した。
「今こうしてね」
「そうね。それでだけれど」
「それで?」
「これで終わりじゃないのよね」
彼女はすっと上を見上げた。そこには空がある。
「私達って」
「そうだね。これからだよね」
「結婚はゴールじゃなくてね」
「スタートだね。僕達の」
「ええ、私達のね」
「スタートだよね」
「それじゃあね」
顔を僕の方に戻してきた。またあのにこやかな笑顔を戻してだった。
僕の手を握ってきてくれて。それから。
「行きましょう」
「行くんだ」
「ええ、行きましょう」
こう僕に言ってきた。
「二人でね」
「そうだね。道は長いけれどね」
「ええ」
僕達の前には道があった。それはとても長い道だった。何処まで続いているのかわからない。そこまで長い道だった。
その道を二人で見ながら。僕達は話した。
「二人で歩いて行きましょう」
「うん、それと」
「それと?」
「この手はね」
僕は彼女のその手を握り返した。そのうえでまた彼女に告げた。
「離さないからね」
「ずっと握っていてくれるのね」
「そうだよ。離さないからね」
また話してだった。そうして。
「行こうか」
「そうね、行きましょう」
彼女も僕の言葉を受けてくれてだ。そうしてだった。
二人で歩きはじめた。人生という長い長い道をだ。それは確かに長い。けれどそれでも二人だと辛くはなかった。寂しくなんかなかった。
LONG ROAD 完
2010・9・8
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