第三章
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「今みたいに」
「そうなのね。水泳部かしら」
「いえ、バスケ部です」
そこだとだ、僕は女の人に答えた。
「けれど泳ぐのは好きで」
「それでなのね」
「泳いでました」
「いい泳ぎ方だったわ、速かったり」
女の人は笑顔で僕に話してくれた。
「水泳部かと思ったわ」
「そこまでは」
「まあまあ。実は私ね」
ここでだ、女の人はこう僕に言ってきた。
「大学で水泳してて」
「あっ、大学生なんですか」
「そうなの、驚いた?」
「まあ。先輩かなって」
顔立ちからそう思った、そしてその通りだった。
「思ってましたけれど」
「そうなのね。それで君の泳ぎね」
「いいんですか」
「ええ、本当に水泳部みたいよ」
「泳ぐの好きですから」
またこう答えた僕だった。
「それで」
「じゃあまだ泳げるかしら」
今度はこう尋ねてきた。
「今も」
「はい、ただ二キロ泳いだので」
「相当泳いだのね、もう」
「それで少し休もうと」
思って実際にプールから出た、冷えた身体も何処かで温めようかと思っていた。
「それで出ました」
「わかったわ、じゃあね」
「それじゃあ?」
「私はここに一人で来たの」
一人でだ、このプールにだというのだ。
「そうして一人で練習がてら泳いでたけれどね」
「今はですね」
「そう、休んでるの」
僕の自分のことも話してくれる。
「そうしてるのよ」
「そうなんですか」
「それでよかったらね」
僕に自分のリードのまま話してくる、僕は完全にこの人のペースのままプールサイドで話していた、そうした状況だった。
「今から色々とお話しない?」
「休憩がてらですね」
「飲みものは何がいいかしら」
くすりと笑ってだ、僕にこんなことも言って来た。
「何でもいいわよ」
「って奢ってくれるんですか」
「私が先輩だからね」
それも当然だというのだ。
「君さえよかったらね」
「そこまではいいです」
流石に初対面の人までそこまでしてもらうのは図々しいと思った、それであった。
僕はその誘いはお断りした、そのうえでだった。
二人用の白い席に向かい合って座って話をした、先輩が僕に僕自身のことを色々と聞いてくるものだった。
そして僕のことを一通り聞いてからだ、こうも言って来た。
「わかったわ、じゃあね」
「それじゃあ?」
「来週またここに来られるかしら」
「このプールにですか」
「ええ、どうかしら」
こう言うのだった、僕に。
「来週もね。若し来週このプールに来れば」
「その時は」
「今私黒の競泳水着だけれど」
黒の一色のだ、それが日焼けしている肌によく似合っている。
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