第一章
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お正月
東京、この街は何時でも東京だ。
人が多く騒がしい、けれど俺は今年こそは元旦家でゲームだのアニメだので完全に寝正月を決め込もうとしていたら母親にこう言われた。
「あんた部活は?」
「ないよ」
俺は高校では陸上部にいる、長距離の選手だ。しかし正月なので部活もない。
「そんなの」
「じゃあ遊びに行く予定は・」
「ないよ、そっちも」
このこともあっさりと答える。
「ついでに言えばバイトもさ」
「何もないのね」
「ああ、だから寝正月ってな」
「一つ言っておくけれど今からうち騒がしくなるわよ」
お袋は寝正月を楽しむという俺にこう言ってきた。
「あんたにとっては残念だけれどね」
「えっ、何でだよ」
「お父さんの兄弟姉妹が全員来るのよ」
うちの親父は八人兄弟姉妹の四人目だ、兄姉姉自分弟弟妹弟という構成だ、この叔父さん叔母さん連中がどれも相当飲んべでしかも騒がしい。
「子供も全員連れてね」
「おい、叔父さん叔母さんの子供って」
一瞬頭の中で数を数えた、俺は一人っ子だが叔父さん叔母さん達は皆二人も三人も子供がいる、合わせると。
「二十人か、子供が」
「あんたの従兄弟も全員よ」
「何でそんなに来るんだよ」
「ついでに言えば叔父さん叔母さんの奥さんと旦那さんも皆一緒だから」
数は増える一方だった、鼠算みたいに。
「いいわね」
「だから何でそんなに来るんだよ」
「だってって。お正月でうちの家が大きいからね」
親父はお袋の家に入っている、このお袋の家がまた大きい。昔からでかい有名な本尊もある寺で親父はそこに婿入りした、ついでに言えば俺はその寺の跡取り息子だ。寺だけに敷地面積は相当なもので家もでかい。
そのでかさからだ、親戚が皆来てだというのだ。
「すき焼きパーティーするのよ」
「坊さんがすき焼きねえ」
「何言ってるのよ、今更」
お袋は寺で行うすき焼きパーティーにどうかという俺にこう返してきた。
「それはいいのよ」
「ああ、出されたものを残さず食べるのが仏教だからな」
「今は肉食妻帯はいいの」
それが今の坊さんの世界だ、それはうちの寺でもだ。
「大事なのは信仰、それとね」
「食いものを粗末にしないことだよな」
「わかってるじゃない、流石は寺の跡取りね」
「褒めたって何も出ないぜ、とにかくな」
「あんた寝正月は出来ないわよ」
お袋はこのことはきっぱりと言った。
「いいわね」
「じゃあどうしろってんだよ」
「家ですき焼き食べる?」
俺にこう言ってきた。
「あんたの分もたっぷりあるわよ」
「それなあ、すき焼きもいいけれどな」
どうかとだ、俺は自分の部屋の襖のところに立って言ってくるお袋に寝転がったままの状態で言葉を返した。
「
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