記憶の彼方
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車の外部に括りつけられて寒い思いをする事になるだろうが。
岩肌に囲まれた場所に、敵の姿は見えなく、前進した第二分隊に対しても攻撃はないようだ。そこでしばらく待ってから、アレスは第一分隊の装甲車とともに歩き始めた。
「小隊長。バセットが斥候隊を発見したそうです」
「敵の姿は?」
「現在、周辺を策敵中ですが発見はせず、生存者もいません」
「わかった。索敵終了後に合流しよう」
「了解」
短いカッセルの言葉に、理解していたとしてもアレスは首を振った。
厳寒の大地では、わずか数十分でも体力を奪われる。
準備もなく一昼夜も過ごせるわけがない。
理解していたとしても、生存者なしの報告にはため息を吐いてしまう。
容赦なく雪は叩きつけて、降り積もる。
吐いた息から漏れる水蒸気で、アレスの服の襟が凍り始めていた。
+ + +
最初の連絡から数分で、斥候を務めた第三小隊第二分隊の面々は発見した。
生存者はない。
それはわかっていた事であったが、現場を見ればなおさら理解が出来る。
「一台はナパームで完全に蒸し焼きに、残りは……」
バセットは小さく首を振った。
死体はそこらに散らばっており、一台が奇襲によって破壊され、散開した事を窺わせていた。主な死因は頭部をレーザーで貫通されたものだ。
おそらくは痛いと思う暇もなかっただろう。
ほぼ即死であったことが、まだ救いだろうとカッセルが苦々しげに呟いた。
「運がなかったの。敵の待ち伏せにあって――二個小隊といったところか」
カッセルの言葉に答えず、アレスは周囲を見渡した。
ある者は岩場から、ある者は雪原から、またある者は装甲車の影から。
転々と散らばる死体を集める部下の姿に、アレスはゆっくりと首を振った。
「いや。少数だ。囲まれたのならばここまで死体は散らばっていないはず。それに、全員がほとんどが頭を一撃で狙撃されている。そんな優秀な人間が複数も同じ隊にはいないだろう」
「まさか。そんなことが出来るのは、うちじゃローゼンリッターくらいでしょう?」
そんな精鋭がこんな場所にいるわけがないと続きかけたカッセルの言葉を、アレスが奪った。
「いたのだろう。まさに軍曹のいう運がなかったことにね」
倒れる死体を確認しながら、アレスは息を吐いた。
忘れていたと後悔は少し。おそらくこの場には、ラインハルトとキルヒアイスが二人でいた。
アレスもラインハルトとキルヒアイスの初陣がカプチェランカであるという事は知っていた。そこで、罠にかけられたということも知っている。
だが、アレスは原作は知っていても、原作を持っているわけではない。
事細かに覚えているわけでもなく、大きな事件を理解できているだけで、その外周と
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