暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
記憶の彼方
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 硬い壁面に身体を預ければ、静かにアレスは瞳を閉じた。

 アレスは原作を知っている。
 しかし、原作を全て理解しているわけではない。
 カプチェランカでの戦闘があったと記憶していても、どのような戦闘であったか、ましてや一戦闘など長い記憶で残ってはいない。
 ラインハルトとキルヒアイスが味方の罠にかかっているなど、予想する事さえできなかった。もし、アレスが原作を理解していたのであれば、全速力で進行し、ラインハルトの命を狙ったことであろう。

 それが間に合わなかったかもしれないが。
 幸か不幸か、そうはならなかった。

 + + +
 
「間もなくつきます」
 短い言葉に、アレスは瞳を開けた。
 思いの他熟睡していたことに、唇を拭った。
 幸いなことに涎は垂らしておらず、バセットが脇に控えている。

「もっと早く起こしてくれて構わなかったよ」
「気持ちよさそうだったので。敵の反応は一切ありません」
「味方は?」
「それも」
 静かに首を振る姿に、予想されていたことであったが、アレスは小さく息を吐いた。動けばバセットが脇に避けて、頭上の扉までの場所を開ける。

 一人が顔出して見張りをしている。
 モイラという名前だった。
 その隣から顔を出せば、温まっていた顔が一瞬に冷える。
 唇まで服の中に入れながら、少し変わるとモイラに伝えた。
「いえ。任務なので」

「ああ……じゃあ、頼んだ」
 生真面目なバセットの影響か、アレスのいる第二分隊は良いように影響されているようだ。これがカッセル率いる第一分隊であれば、嬉々として装甲車の中に入ったことだろう。
 まあ、あちらはあちらで馬鹿が多いから楽しい事は楽しいのだがな。

 雪だるまになった男や常にチョコレートバーを手にしている男など、話題性には事欠かない。不真面目なカッセルと生真面目なバセットの両輪が、上手くかみ合ってきたと思う。まだ訓練も不十分だが、今後時間がたてば他の小隊にも負けないと思う。そう思った事に、五月に赴任してから二カ月余りで自分の隊に愛着を持った事に、アレスは唇をあげた。
 小隊長というのも悪くはない。

「ま、そう思う事までがカッセルの爺さんの罠の可能性もあるが」
「第一分隊長がどうかされましたか?」
「いや。こちらのことだ」
 呟いて、アレスは外に目を走らせた。
 白銀の平原は過ぎて、ごつごつとした岩が多くなってきている。
 装甲車に入力されていたデータがなければ、ここまで早く走ることはできないだろう。装甲車はほぼ自動で操縦され、細かい操作を運転手が担当している。

 切り裂くような風に、アレスは周囲を見渡す。
 盲点が多い。それは奇襲を受けやすい光景だ。
 バセットは敵の反応がないから起こさなかったと伝え
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ