最後の日
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に進学したが、退学したのは去年の話だそうだ。
「どこに住んでるの?」
「隣の町よ。家の近くに公園があって、そこの桜がお気に入りなの。行けるときは毎年見に行ったわ。」
「桜、好きなの?」
「うーん……桜がというか、そこの桜が好きなのよ。昔からお気に入りの場所だから。」
そういうと飲み終えた缶を投げ捨て、僕の飲みかけのチェリーサワーを一息で飲み干す。
僕が驚いて彼女を見ていると、こちらをにやりと見てくる……確信犯だ。
「別に飲みかけじゃなくても……」
「桜の話をさせたのがいけないのよ。」
そう笑いながら缶をまた海へと投げ捨てる。
「そういえばあなたは何で死のうと思ったの??」
そう聞かれ、愚痴っぽくなるよと断って話し始めた……
「そ……それで、さ……。なんで生きてるのかなって……」
大学受験の時代から話し始めて……最近の話になる。泣いていた。悲しかった。話していて感極まる……情けない……だめな大人の典型だ。
上司からの暴力、後輩からの蔑み、情けない自分。……もっと言えばここにくるまで誰にも相談できないような自分の孤独感。
全てが重なり合い、涙を流していた。
「お…俺だって……自分な…なりに一生懸命だったよ。いつか……いつか報われる……ってそ…そう思って…。周り…周りは、俺を蔑むし…俺はじ…自分すら信じられない。もう…嫌なんだよ……」
情けなくも涙を大量に流して年下の女に泣きつく。最低だと思うだろう……俺だってそう思う。
そして泣いていると暖かい温もり……彼女が俺の頭を抱いていた。そして子供にあやすかのようにポンポンと優しくたたいていた。
「よしよし。頑張ったね……良く頑張ったよ。だってこんなになっちゃったんだもん。辛いに決まってるよ。」
そう言われてまた涙を流す……
「貴方なりの精一杯……周りが認めなくても貴方は認めなきゃ。じゃなきゃ悲しいよ。これから死ぬんだとしてもさ……自分くらい認めなきゃ。」
そう言われてまた涙を流す……そしてそのままゆったりと意識は消えた……
目が覚める……周りは暗くなり、少しだけ肌寒さを感じる……。
「あ、起きた?」
そう声を掛けられたが、寝る前を思い出し、少し照れてしまった。
「あ……うん。ごめんね。」
そう言うと彼女は「いえいえ。」と笑顔で言われ安心した。
「おかげでなんか気持ちが軽くなった……っていうのかな。なんかすっきりしたよ。今、とても良い気持ちだ。」
「それは良かったわ。私も、最後に役に立てたみたいね。」
そして……笑顔が消えて、
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