最後の日
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駅の売店で買うのはウーロン茶とおにぎりを3つほど、それとチョコレート系の菓子。時間は12時を回っていた。
おにぎりを頬張りながら場所へ向かう。
普段ならしない、品のない行為。平日の昼とあって、駅前から少し歩けば人通りはほとんど無かったのが救いだろう。
3年目、同僚3人は辞めていた。僕だけが残ってた。
全員、今では連絡すら取っていない。
「お前は辞めないでくれよ。」
会社での飲み会、上司からの優しい言葉。心が躍った……
頭に衝撃がくる。次は腹……そして頬。
「馬鹿が!何故言われたことも出来ないんだ!」
昨日の優しい上司。機嫌が悪いのだろう……いつもなら気にも止めないようなことで殴りかかってくる。
後輩からの侮蔑の眼差し。普段口うるさいであろう僕の情けない姿を見て、口元に笑みを浮かべている。
彼らは学歴が良い。僕よりも良いし、その上司よりも良い。
だから扱いに差が出る。……わかりやすい図式だった。受験で覚えた難解な公式より、よっぽどわかりやすい。そして、受験のどんな勉強よりも苦痛だった。
不健康チックなおにぎりの塩味。それをウーロン茶で流し込み、久々にうまいと感じた。そのあと歩きながらデザートに入る。幸せとも感じた。
目的地にゆっくりと向かう……が道にも迷わなかったため、残り数十メートルの地点で時間が多少余る。
そのことに気づき、コンビニを探す……そして多量の酒とつまみや食料を買い、冷たいジュースを買う。
店員に怪訝な顔をされる……昼からスーツ姿で酒を買う僕を社会のゴミと見たのか。それとも財布のほとんどをそれに費やした僕を怪しく思えたのか……それを気にも止めず、コンビニを出た。
ジュースを飲みながら目的地へと歩く……何年ぶりだろうか。子供の頃以来のジュースだった。
そして、目的地……何の特徴も無い……強いて言うなら近くにバス停と駐車場があり、海水浴場からは遠い……海岸へと着いた。
侮蔑の籠もる視線。上司の暴力。自分の情けなさ。
……どれが理由かは知らない。全てなのか、どれでも無いのか。
その時何かが変わった。視界がクリアになったというのか……新品の眼鏡を掛けた感覚に近いだろう。その感覚の後、気づけば上司を殴り倒していた。その後は後輩の一人の顔につばを吐きかけて、会社を後にしていた。
はっきりと自分のしたことに気づいたのは帰りの電車に乗ってしばらく立った後だった。わき上がる感情は不思議と後悔では無く……高揚感だった。
自分が初めて自由だと感じた。口元が勝手に歪み、何故か涙が溜まる。
アパートに帰り、買いだめてある酒を煽った。普段なら明日の仕事を考えて飲まない酒を煽
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