鳳と竜は麒麟を求む
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てくれるはずも無かった。
余りにわたわたと手を振る朱里がおもしろくて笑うこと幾分、彼女はつーんと拗ねていた。
「あんまり拗ねてると可愛い顔が台無しだぞ」
と言っても彼女はちらとこちらを見て、またすぐにそっぽを向く。
いや、確かにその仕草も愛らしいが。
「ごめんな。からかって悪かった。どうしたら許してくれる?」
「……お買いものに、付き合って下さい」
「おお、いいぞ。なら店を出ようか」
朱里から打開策を提案されたので喜んで頷き、団子と茶を平らげてから二人で店を後にする。
未だに拗ねている朱里はこちらを見もせずに、目を瞑って歩き続けていた。
さすがにそれじゃ危ないだろうに。誰かとぶつかったらどうするんだ。
そう思って片方の手を繋ぐ。
「ひゃ、ど、どうして」
「いや、目を瞑ったままで誰かとぶつかったらどうすんだよ。嫌ならやめるが」
「い、いいい嫌じゃないでしゅ!」
慌てているのか恥ずかしいのか、最近は全く出なくなった彼女の噛み癖が顔を覗かせた。
「ならこのままでしばらく行こうか。街の人は気にしないだろ。手を繋いで歩くなんて日常茶飯……事……だし……」
朱里は話の途中から批難の目じゃなくお説教モードのハイライトが消えた瞳と笑顔でこちらを見ていた。
「秋斗さんはいつも誰と手を繋いでいるのでしょうか?」
言葉と共に凍える風が首筋を撫でてゾクリと寒気が一つ。
「い、いや、街の子供たちとだが」
慌てて言うと彼女はがっくりと肩を落として誰にもわかるように落胆した。しかし、どう答えてもダメだった気がする。
「私は子供じゃないです」
朱里の批難に大きな眼鏡を掛けた赤い蝶ネクタイの男の子が頭に浮かぶ。
見た目は子供で頭脳は大人というわけだ。
「……失礼な事を考えてませんか?」
自身の考えている事を見抜かれ、誤魔化す為に彼女の頭を一つ撫でると、恨めしい目つきで見上げてくる。
「さあ、どうだろうな」
「またそうやって誤魔化すんですね。いいですよー」
「朱里は結構拗ねやすいんだな。初めて知ったよ」
本当に、今までは自分から避けていたからこんな細かい事に気付かなかった。
そうだな、これからは気にせず皆ともっと関わろう。そうすればいいように変わるだろう。
むくれ続ける朱里を苦笑しながら眺めていると視界に面白いモノが映った。
「朱里、あれを買おう」
立ち止まり、指さす方を見させるとそこには白い羽の団扇がある。
諸葛亮といえばまさしくそれだ、と言える一番の代物。
「綺麗な団扇……」
「ほら、軍師って隊に指示する時に何か目安になるモノがあった方が便利だろ?」
店に近づいて、朱里は団扇を手に取ってからまじまじと眺め、何を思ったのか振り返り真剣な表情でビシッと俺を指し示す。
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