鳳と竜は麒麟を求む
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ら空のような人になりたい」
「秋斗さんの言う空のような人とはどのような方なのでしょうか?」
相変わらず誰もが全く考えつかないような事を言う彼を羨みつつ、具体的な答えを聞いてみた。
「さてな。それは朱里が考えてくれ」
意地の悪い笑みを浮かべてこちらを見る彼に、少しむっとしてしまう。
教えてくれてもいいのに。
そんな感情を抑え込み、どこまでも広がる水色を見上げながら思考を回してみた。
誰の頭上にもあるもので
時間によって色を変えて
気候によって顔を変えて
季節によって長さが変わる
いや、きっとこの人が言いたいのはそんな事じゃない。
そこで先ほどの秋斗さんの言葉が頭に響く。
見てたら悩みなんか消えてしまう。
ああ、そうか。やっぱりこの人は――――
「誰もが想いを馳せ、誰もを癒し、誰もを包み込め、悩みも何もかも忘れさせてあげられるような人って事ですか?」
「朱里がそう思ったんならそれが答えかもな」
結局曖昧にぼかす彼は、何も教えてはくれない。
意地悪な彼に自身の怒りを示すために口を尖らせて批難の目で見つめてみる。
「そう怒るな。別にいじわるしてるわけじゃない。……空を見上げる時ってのはいろんな時があるだろう?
哀しい時、寂しい時、嬉しい時、楽しい時、悩んだ時、他にも沢山だ。そしてその時々によって人に与えるモノが違う。人の心を映す鏡、なんて話だってある。そういう事だったらいいなぁ」
言われて理解が少しだけ深まった。
曖昧で、不明瞭で、でもそれこそが答えの形なのかもしれない。
人を映す鏡とは、共感できるという事。人によって求めるモノは違うから、誰かの為でありたいという彼の願いそのもの。
「俺は空が羨ましいのさ。だからなりたい。誰かにとっての空になれたら、それでいいのかもしれない」
彼も自分以外の何かが羨ましいのか。対象が人ではなくて膨大なモノなのが彼らしいと言える。
私は何が一番羨ましいだろうか。私は羨ましいから何かになりたいのだろうか。
秋斗さんのような思考が出来たらすぐに答えが出るのだろう。でも固い思考をする私ではすぐには出てこない。
「まーた考え込んでるのか。まあ、そんなとこも朱里らしくて可愛いけど」
ドクンと大きな鼓動が耳に響き、顔全体を熱が覆っていく。
「な、なな、何をいきなり」
秋斗さんはさらりととんでもない事を言って私の慌てふためいてる姿を見てか笑いはじめた。
「あはは! そんなんじゃいつか好きな人が出来たらもっと困るぞ?」
この人は本当に無自覚で言ってるから困る。雛里ちゃんもそれのせいでいつも苦労しているのだから。
「もう! からかわないでください!」
必死で言っても笑いながら謝るだけで、こちらの揺れる心と跳ねる心の臓には気付い
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