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八条学園怪異譚
第四十九話 柳の歌その十四

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「そのお野菜と他の農家の人が作ったものを物々交換ですね」
「それでなんですね」
「そうよ、それでね」
 食費の心配はしなかったというのだ。
「問題は作る量で。本当に力士の人並だからね」
「お鍋とか凄そうですね」
「もうどっさりと」
「すき焼きが好きなのよ、旦那」
 鍋の代名詞と言っていい、明治の初期からある料理だ。
「それでお肉もね」
「凄い量を用意してですね」
「作ってたんですね」
「そうよ、もう凄かったから」
 美奈は二人にこのことを笑って話す。
「いや、見ていて痛快だったわ」
「痛快ですか」
「その食べ方も」
「ええ、まあ私も食べる方だったけれどね」
 美奈子はにこにことしつつ自分のことも話す。
「痩せの大食いって言われてたわ」
「畑仕事でカロリーを使うからですね」
 聖花がこのことを言って来た。
「だからですね」
「そうよ、死ぬ三日前まで働いていたわ」
「三日前まで、ですか」
「凄いですね」
「二日位農協の方でお話してて働いてなくて」
 そして死ぬその日にというのだ。
「朝動こうとしたら心臓がね」
「それで今ここにおられるんですね」
「そうなんですか」
「そうよ、あっさりと苦しまずに死ねたわ」
 いい死に方と言えるだろう、苦しまなかったのだから。
「それで思い出のこの学園に戻ってね」
「今この柳道にですね」
「おられるんですね」
「そうなのよ、やっぱりこの学園はいいわ」
 八条学園、ここはというのだ。
「戦前とは全く違ってるけれど」
「それでもですか」
「思い出の校舎なんですか」
「だからね」
 それでだというのだ、美奈子は二人に笑顔で話す。
 そして柳達も見てだ、こんなことも言った。
「それでだけれど」
「柳、ですね」
「そこですね」
「柳は幽霊に相応しい場所よね」
「ですね、柳に幽霊は定番ですね」
「まさにね」
「そうでしょ、だからね」
 それでだというのだ。
「幽霊がここにいると絵になるでしょ」
「美奈子さんの格好もですね」
「まさにそれですね」
「幽霊っていったらね」
 日本のそれなら、というのだ。
「これしかないでしょ」
「随分古典的ですけれど」
「その格好じゃないとですか」
「幽霊になった気がしないのよ」
 それでこの格好をしているというのだ。
「いや、身体のあった頃はもんぺだったけれどね」
「ああ、農作業をするから」
「それでなんですね」
 二人ももんぺはそれで納得した、確かにもんぺは農作業に向いているというかまさに農作業の為の服と言っていい。
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