TURN113 ソビエト占領その九
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「イタリンはいい国ですね、暖かくて」
「あっ、そのこともなんだ」
「イタリンは素晴らしい国です」
そうだともいうのだ。
「パスタやピザといった美味しいものもあります」
「ソビエトではパスタ食べないんだ」
「給食で出ますが」
食べることは食べる、だがそれでもだというのだ。
「しかし」
「それでもなんだ」
「イタリンの料理は、一度ムッチリーニ統領との会談の時に訪問しましたが」
「あっ、その時俺いなかったね」
それでゲーペと会ったのは初対面だったのだ。
「そうだったね」
「そうでしたね、イタリアさんはおられませんでしたね」
「丁度その時ドクツに行ってたんだよね」
「それで、でしたね」
「兄ちゃんや妹達とは会ったね」
「はい」
その通りだとだ、こう答えるゲーペだった。
「統領とはお会い出来ました」
「そうそう、それでイタリン料理をだね」
「御馳走して頂けました」
「美味しいよね、うちのお料理」
「はい、とても」
ゲーペは微かに笑ってこうも言う。
「イタリンは本当にいい国ですね」
「じゃあこっちに亡命ってことでね」
「そうさせて頂ければ」
「うちは何か今の連合国から大目に見てもらってるみたいだし」
「実はカテーリン書記長もです」
あのカテーリンにしてもだというのだ、生真面目に過ぎる彼女でもだ。
「イタリンはお好きで同盟を結べて喜んでおられます」
「あの人もうちが好きなんだ」
「そうです、ですからパスタやチーズも給食に取り入れられています」
そうだというのだ。
「ワインも」
「ソビエトでもうちって人気あるんだ」
「暖かいですし」
このことも大きな理由だった、ソビエトがイタリンを好きな。
「では今はですね」
「うん、宜しくね」
こうしてゲーペの亡命先は決定した、だがここで。
東郷はさらにだ、ゲーペにこのことも問うた。
「君は南から来たな」
「そのことですか」
「そうだ、モスクワへの航路はウラル、そしてだ」
「ロシア平原ですね」
「その二つの方面からしかない」
これを方面で言うと。
「東西だ」
「その通りです」
「しかし君は南から来た」
答えたゲーペにさらに問う。
「これはモスクワに南からも行き来出来るということだ」
「!?まさか」
その話を聞いてだ、東郷の傍にいた日本の顔がはっとなった。
そのうえでだ、彼は東郷に顔を向けて問うた。
「ソビエトにはま我々の知らない星域が」
「実在したということだな」
「そういうことですね」
「若しかすると、と思ってはいた」
東郷が最初に察したことだ、だが彼にしても確証はなかったのだ。
しかしゲーペが彼等が今いるモスクワに南から来たことからだ、このことを確信してそのうえで言うのだった
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