青い春
拾参 知らない自分
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、自然な無表情がずっと続いている。それが保たれている。
出会った時から、変わっていない。
玲はいつも、そんな顔つきをしていた。
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「ここに居る私は、私そのものだと思う?」
映画の帰りに寄ったカフェで二人コーヒーを飲んでいると、玲がそう切り出した。
映画館からここまで、ほとんど会話は無かった。真司はこういう時、玲の言葉を待つようにしている。最初は怒らせたのかと気を揉んでいたが、逢引を続いているうち、これが玲のペースだと分かってきていた。
「うん、もちろん。そう思ってるけど」
「ここに居るはずの自分を探す為に、遠くに行く…今ここに居る自分が、まるで自分じゃないように思えてしまうからなのね…」
つぶやくようにして言うと、玲は少しぬるくなったコーヒーを啜る。
真司は、さっき見た映画の話だな、とすぐに分かった。
今日見た映画は、玲がもとより見たがっていた映画だった。玲が、哲学的なテーマが強く出ている書籍をよく読んでいるのを真司は知っている。
そういう好みなのだろうか?
いや。
玲もまた、先ほど見た映画の主人公のように、
「自己」に悩んでいるからではないだろうか?
「クラスでの顔、家での顔、部活での顔…人は色々な顔を使い分けている。そのうちのどれが"自分そのもの"かなんて、決められると思う?」
玲の赤い瞳が真司の眼を見据えた。真司の胸がドキッとする。一緒に居る時間を重ねても、真司は中々この赤い瞳には慣れなかった。
「碇君…あなたの前に居る"私"は、本当に"私"かしら?」
正面に真司を捉え、静かに問うた玲に、真司は体が固まった。
何だよこれ。どう答えれば良いんだよ。
一体どう答えるのが正解なんだろう?
玲はその目を真司から離そうとしない。
気まずい沈黙が続く。
沈黙が続くのはいつもの事だが、今回はいつもの沈黙とは質が違った。
いつもの沈黙は、玲が全くそれを問題にしていないように感じた。だから真司もそれを問題にしなかった。
今は違う。玲は、真司を試すような目で見つめている。
「な、なんでそんな事…」
結局真司は、そう言ってお茶を濁すしかなかった。
「ごめんなさい」
玲は視線を外し、完全に冷めてしまったコーヒーの残りを啜った。飲み終えた自分の口を、紙ナプキンで丁寧に拭う。
「碇君と居る時の自分が、いつもの自分と違うような気がして…」
「え?」
また唐突に言われて、真司はキョトンとする。
「…自分の事、私は空っぽだと思ってた。中身なんて、何も無いわ。でも、碇君と居ると、少し違う気がするの」
真司は黙って聞く。
「…私の中に、何かがあるように思えて。ポカポカするの、心が
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