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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第45話 「権威と権力」
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から、その後は全てご自分の思うとおりにしたがるものなのに、為されない。
 不思議なお方だ。
 確かに宰相閣下は軍や政府の上位に位置されている。
 いかに実働部隊を掌握していても、いさとなれば将官たちの命よりも、兵士達は宰相閣下のご命令に従うだろう。
 これが皇太子という権威、ご威光なのだろうか?
 全てに対して自らの御意志を通す事ができる。権威と権力どちらがより、高位に位置するのか、私如きにはよく分からないのだが……。

「けっ、条件が気にいらねえっていうんならよぉ〜。フェザーンの高等弁務官を通じて、交渉に入れば良いのによぉ〜。即軍事行動に入るっていうのが気にいらねえ。あいつら何考えてんだっ!!」

 フェザーンから知らされた情報を知った際の、宰相閣下の反応だ。
 確かにその通りだろう。
 仮にもイゼルローンで交渉が行われたのだ。
 二度とできないという訳ではあるまい。
 打診ぐらいはできたはずだ。それを帝国が蹴ったというなら話は分かるが、打診すらしていない。愚かとしか言いようがないな。
 交渉能力がないのか? それとも交渉しようという事すら思いつかなかったのだろうか?
 まさか、こちら側が全ての段取りをつけてやらねば、同盟側は交渉できない、という事か? まるで子どもを相手にしている気分に陥る。
 頭の痛いことだ。

「軍に伝えろ。向こうがやる気というなら潰して来いと、な。増援艦隊は八個だ。今回は容赦してやらねえ」
「ハッ!」
「俺は手を差し伸べた。窓口も作った。だが手を振り払ったのは同盟で、窓口を閉ざしたのも同盟だ」

 宰相閣下の声が低くなった。
 怒りを押し殺しているかのようだ。よほどお怒りのご様子。
 宰相閣下が自ら軍を動かされるのだ。
 報復は苛烈なものになるだろう。
 思わず身が震えそうになった。

 ■宰相府 ラインハルト・フォン・ミューゼル■

 宰相府の大画面に皇太子の姿が映っている。
 出征する軍を前にして、檄を飛ばしているのだ。

「帝国は自由惑星同盟に対して、この戦争を止めるための手を差し伸べた。交渉の窓口も作った!! だが、手は振り払われ、窓口は閉ざされた。交渉など無用という事かっ!!」

 語りかけるように静かに話し始められた声が、だんだん大きくなっていく。
 兵士達が皇太子を固唾を飲んで、見つめている。
 怒りが画面越しにも伝わってきそうだ。直接相対している兵士は、それをより強く感じているだろう。

「連中がどうしても、戦争がしたいというならば、座して攻められるのを待っている帝国ではない。そうだろう!! 連中に我々の怒りと失望を思い知らせてやれ。平和の到来を希求する帝国人の心を踏み躙った事を、後悔させてやれ。あの戦争狂どもをぶちのめして来いっ!!」

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