第45話 「権威と権力」
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に隠す。
はあっというため息が、皇太子殿下の口から漏れた。
「あのな〜書くなとは言わんが、大声で喚くな。この手の奴は、隠れてやってろ」
「は、はいっ」
「はいっ」
そう言って皇太子殿下はご自分の席に戻られた。
ふう〜っ、やばいやばい。
あやうく絞め殺されても、誰も庇ってくれない状況になるところだった。
しかし改めて皇太子殿下に目を向けると、う〜ん、やはり絵になるお方だと思う。
強気な俺様キャラだし、絶対攻めに決まっている。
創作意欲とネタが湯水のように湧いてくる。いける。もう何も怖くない。
あ〜いけないいけない。自戒しなければ……。
「腐女子はこれだから……」
ぼそっと皇太子殿下がなにやら呟かれた。
眼を瞑って目頭を指で押さえている。
■ノイエ・サンスーシ内庭園 アンネローゼ・フォン・ミューゼル■
腐女子で貴腐人な寵姫たちの所為で、違う意味で疲れてしまったらしい皇太子殿下が、心を癒すべく宰相府を出て、庭園までやってきた。
わたしも一緒についていく。
大きな木の根元に横たわった皇太子殿下が軽く眼を瞑る。
軽やかな風が心地良い。
皇太子殿下の髪を風がゆるやかに流れていく。
わたしはそっと髪を撫でる。さらさらとした髪が指の間をすり抜け、形をかえた。
口元に笑みが浮かんでしまう。鼻筋から唇を指でなぞる。意外と線が細いのかもしれない。
ふと以前見た、白い虎の映像を思い出す。
飢えと孤独が、虎を森林の王にする。お腹が満たされれば、小動物ですら敵ではないように眠りに入り、瞳に宿る光だけが王者の余韻を残す。
このお方はどこか、孤独な影を引きずっている。多くの人に囲まれていても、孤独な印象を受けてしまう。孤高の王。銀河帝国の皇太子とはこういう風にしか、生きられないのだろうか?
やりたい事とできる事、やるべき事が違う。人は誰しもそんなもんだ。
そう自嘲気味に嘯く。
それが哀しい。
「わたしはずっとお傍にいます。だから貴方は一人ではないんですよ。それを忘れないで」
そっと囁く。
髪を撫でていると、くすぐったそうに身じろぎする。
寝顔だけはまるでこどものよう。笑みが浮かんでくる。
陽は暖かく、風も心地良い。隣には皇太子殿下がおられる。幸せだと思う。
こんな時間がずっと続けば良いのに……。
足音が聞こえてきた。
そっとため息を吐く。
静寂が途切れ、いつものような喧騒が始まる。
皇太子殿下の目が開かれていく。眠りに落ちていた獣が目を覚ます。
立ち上がり髪をかき上げたときには、いつもの皇太子殿下だ。
銀河帝国皇太子・帝国宰相ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム。
「おお、ここにおられましたか」
「ど
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