暁 〜小説投稿サイト〜
皇太子殿下はご機嫌ななめ
第45話 「権威と権力」
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に隠す。
 はあっというため息が、皇太子殿下の口から漏れた。

「あのな〜書くなとは言わんが、大声で喚くな。この手の奴は、隠れてやってろ」
「は、はいっ」
「はいっ」

 そう言って皇太子殿下はご自分の席に戻られた。
 ふう〜っ、やばいやばい。
 あやうく絞め殺されても、誰も庇ってくれない状況になるところだった。
 しかし改めて皇太子殿下に目を向けると、う〜ん、やはり絵になるお方だと思う。
 強気な俺様キャラだし、絶対攻めに決まっている。
 創作意欲とネタが湯水のように湧いてくる。いける。もう何も怖くない。
 あ〜いけないいけない。自戒しなければ……。

「腐女子はこれだから……」

 ぼそっと皇太子殿下がなにやら呟かれた。
 眼を瞑って目頭を指で押さえている。

 ■ノイエ・サンスーシ内庭園 アンネローゼ・フォン・ミューゼル■

 腐女子で貴腐人な寵姫たちの所為で、違う意味で疲れてしまったらしい皇太子殿下が、心を癒すべく宰相府を出て、庭園までやってきた。
 わたしも一緒についていく。
 大きな木の根元に横たわった皇太子殿下が軽く眼を瞑る。
 軽やかな風が心地良い。
 皇太子殿下の髪を風がゆるやかに流れていく。
 わたしはそっと髪を撫でる。さらさらとした髪が指の間をすり抜け、形をかえた。
 口元に笑みが浮かんでしまう。鼻筋から唇を指でなぞる。意外と線が細いのかもしれない。
 ふと以前見た、白い虎の映像を思い出す。
 飢えと孤独が、虎を森林の王にする。お腹が満たされれば、小動物ですら敵ではないように眠りに入り、瞳に宿る光だけが王者の余韻を残す。
 このお方はどこか、孤独な影を引きずっている。多くの人に囲まれていても、孤独な印象を受けてしまう。孤高の王。銀河帝国の皇太子とはこういう風にしか、生きられないのだろうか?
 やりたい事とできる事、やるべき事が違う。人は誰しもそんなもんだ。
 そう自嘲気味に嘯く。
 それが哀しい。

「わたしはずっとお傍にいます。だから貴方は一人ではないんですよ。それを忘れないで」

 そっと囁く。
 髪を撫でていると、くすぐったそうに身じろぎする。
 寝顔だけはまるでこどものよう。笑みが浮かんでくる。
 陽は暖かく、風も心地良い。隣には皇太子殿下がおられる。幸せだと思う。
 こんな時間がずっと続けば良いのに……。
 足音が聞こえてきた。
 そっとため息を吐く。
 静寂が途切れ、いつものような喧騒が始まる。
 皇太子殿下の目が開かれていく。眠りに落ちていた獣が目を覚ます。
 立ち上がり髪をかき上げたときには、いつもの皇太子殿下だ。
 銀河帝国皇太子・帝国宰相ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム。

「おお、ここにおられましたか」
「ど
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ