Episode19:誘拐
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かせて、隼人は壁の向こうの様子を窺った。先ほどまでの銃弾が発射される音は止み、向こうも隼人の出方を窺っているようだった。
(ライフルを持ってる二人より、あの無手の男が気になるな…)
隼人が気にしていたのは一発で致命傷を与えてくるライフル使いではなく、中央に立つ、隼人が侵入してきても眉一つ動かさなかった男だ。
(恐らくは魔法師…それに結構戦闘慣れしてるか、厄介だね)
嘆息して、隼人は懐から漆黒の短剣を取り出した。それをワイヤーの先に括り付け、頭上に投擲した。櫂の知り合いが打ったその短剣は、コンクリートで作られた天井に突き刺さった。
敵の注意が頭上に向いたのを確認。自己加速を行った隼人は素早く壁から飛び出し、ベレッタの引き金を二度引いた。ベレッタはダブルアクションとなっているため、わざわざ一発ずつハンマーを起こさなくていいため、速射、連射に向いている。
隼人の右手に懐かしい衝撃が響き、それぞれ射出された9mmの弾丸はアサルトライフルを構える二人の肩を正確に撃ち抜いた。
実の所、訓練時代の隼人は魔法よりもこういったハンドガンの扱いのほうが長けていた。的を狙えば真ん中に百発百中。その様子を見ていた櫂ですら驚きを禁じ得なかったほどだ。それは、3年のブランクがあっても変わらなかった。
一瞬で二人を無力化した隼人は、残る最警戒人物と正面で向かい合った。相手が魔法師とはいえ、それが厄介だったのは周りにライフルを構える二人がいたからだ。一体一ならば、大した脅威ではない。相手が、相当な手練れでなければ。
「ハァッ!」
雷帝で筋力を底上げした隼人は一息で彼我の距離を詰めるとそのまま右拳を振り抜いた。だがその拳は空を切り、魔法師であろう男は隼人の体を蹴って後方へ飛んだ。だが、そう簡単に距離をとらせる隼人ではなかった。蹴られた反動で二人の距離が空いて行く中、隼人は男に向かって左腕を振った。そこから、いつの間にか回収していた短剣付きのワイヤーが伸び男を縛り上げる。
「終わりだ!」
グン、と慣性に抗う力が男に加わった。隼人が、男を捕縛したワイヤーを自分に向かって引っ張っていたのだ。それを理解して慌てて起動式を構築しようとするも一歩遅かった。
隼人の右拳が、男の左頬を穿った。
「ふぅ…」
吹き飛んでいく男からワイヤーを外し、隼人は次の階段へと向かった。
「…こんなもんかな」
パンパンと手を払う隼人の目の前には、気絶した男が三人と、無惨にもバラバラに破壊されたアサルトライフルが転がっていた。雫が囚われているであろう雑居ビルの三階は恐らく最も手薄な場所であった。アサルトライフルで武装した男が三人。
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