Episode19:誘拐
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るかもしれない。でも、それがなんだ。甘くたっていいじゃないか。弱さがない人間なんていない。その弱さを、なにか他ので補えばいいのだから。
まあ、俺はまだその『他の』を見つけられてないんだけどね。
夜、晩御飯を食べて入浴を済ませた後、俺は昼間にもらった短剣の使い方を考えていた。
「投擲剣かー…んー、いまの俺の武装はワイヤーとそれに付随するリールとベレッタ……」
投擲剣なのだから、投げるのは当たり前。けど、投げたら拾うまで代えが効かなくなっちゃうな。投げたあとすぐに回収できるようにしたいけど、わざわざ魔法は使いたくはないな。
「んー…ん?ああ!ワイヤーあるじゃん!」
そうだよそうだよ、ワイヤーの先端に短剣をくくりつけて、固定。うん、投げて刺せるし拘束できるし引っ張れば返ってくる。完璧だね。
「よっしぃ!なんかうまくいってテンション上がってきた!っとと電話?」
思わず立ち上がってガッツポーズをした時、デスクの上に置いてあった端末がペカペカと点滅し始めた。起動させてみると、それはほのかからの電話だった。
ちなみに、ほのかと雫とはちゃっかり入学式の日にアドレスを交換していた。
「はーい隼人だ『九十九さんっ!』よ…っててて、耳痛い…そんな慌ててどうしたの?」
電話越しのほのかはいつも以上に慌てていた。息も荒いし、声も大きくて耳が痛い…なにか運動でもしてたのかな?
しかし俺のそんな余裕は、次のほのかの言葉に崩された。
「雫がっ、攫われたんですっ!」
「……は?」
ほのかから電話があったあと、俺は急いで寝巻きから私服に着替えて適当なパーカーを羽織って家を出た。父さん達に事情を話す時間すらもどかしく、俺は静止を促す母さんを振り切って夜の道を駆けていた。公の場での理由なき魔法の使用は罪に問われるらしいけど、そんなもの知ったことか。誰かが、バレなきゃ犯罪じゃないって言ってたしね。
いつかの襲撃のときみたいに減重と移動の術式を駆使きて民家の屋根から屋根へ飛び移っては走り去る。
ほのかから送られてきた雫が誘拐されたであろう場所の位置情報を頼りに、俺は歯を食いしばって走り続けた。
「ほのか!」
「あ、九十九さん!」
走り続けて約15分。辿り着いた場所は郊外の廃ビル、というより、俺が過去に壊した『ブランシュ』の補助部隊が拠点にしていた雑居ビルだった。
俺の言葉に振り返ったほのかの表情は今にも泣きそうで、それが事態の深刻さを物語っていた。
「雫は、このビルの中に?」
「はい。絶対にいます」
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