Episode19:誘拐
[1/9]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「ただいまー」
「お帰りなさい隼人」
高校から帰宅すると、居間にはいつもの姉さんではなく母さんがいた。そのことに新鮮さを感じながら、俺は手を洗いに洗面所へ向かった。
姉さんは再び魔法大学の研修でしばらく家を空けている。いつもならここで俺が九十九家の代理当主を務めることになっているが、今日から二ヶ月間は先日帰ってきた父さんが、代理当主の座に就いている。俺としては余計な仕事が増えないから嬉しい限りだ。
「そうだ隼人、櫂が後で話があるから書斎に来るように、って言ってたわよ」
「ん、わかった」
父さんが俺に話?一体なんだろうか。あ、もしかしたらこの間のテレビ電話で言ってたお土産かな。それは楽しみだ。
「父さん、入るよ?」
「隼人か?いいぞ」
九十九家には、無断で入ってはならない部屋が二つある。それは、父さんの書斎であるこの部屋と、地下室の最奥の部屋であった。姉さんはそのどちらにも入ったことがあるらしいのだが、地下室の話しだけはしてくれなかった。俺もこの年になったのだから、その地下室が絶対に人道的に良いものではないことは理解していた。だから待っている。父さんが俺を認めてあの部屋へ入れてくれるのを。ちなみに、父さんの書斎へ入るのもこれが初めてだったりする。
若干緊張しながら入室の許可を得た俺は、意を決して木製の扉を開いた。ギィ、と音を立てて開かれた部屋の中、その空間は、俺が想像していたのよりもずっと狭かった。いや、部屋中に整頓されている本のせいでそう感じるのか、きっと後者なんだろうな、と思い俺はなにやらこちらに背を向けて机上で作業をしている父さんに近づいた。
「ちょっと今手が離せないから、そこで待っていてくれないか?」
「ん、わかったよ」
取り敢えず手持ち無沙汰になった俺は、初めて入った父の書斎をぐるりと眺めてみた。四畳半ほどの部屋に、扉と窓が一つずつ、向かい合うように設計されている。窓の前に大きめのデスクがあって、その他の周囲は全部本棚で埋まっていた。
しかも、その本棚に収まっている本は全て魔法関連だった。最新の魔法情報から、古代魔法について、果ては大昔、まだ現在のように魔法が技術体系化されておらず、『超能力』と呼ばれていた時代についての資料も見受けられた。
「…隼人」
「ん?」
作業が終わったのか、父さんは俺の名前を呼んで振り返った。
「お前に土産を持って帰ってくるって前に言ったよな?」
やっぱりお土産の話か。一体なんだろう、結構色んな国を回ってたりしてたらしいから皆目見当もつかないや。
「これだ」
そう言って、ひょいと放られた黒い物体を俺は右手で
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ