夕暮れ、後に霞は晴れ渡りて
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「うちの真名は霞言います。この命と神速、世の平穏のために使って頂きたい」
「ふふ、あなたの今後の働きに期待する。私の真名は華琳よ。それと……自由なあなたを堅苦しく縛り付けるつもりは無い。公式の場以外は言葉を崩す事を許す。私の軍でもあなたらしく、好きなようにして頂戴ね」
私の言葉に仰天して、霞はまた大きな声で笑い出した。春蘭は口を尖らせて拗ねていたが、私の事を良く分かってくれているから何も言わずにいてくれる。
「あかんなぁ、やっぱり完敗や。ならこれからよろしく頼むで」
そう言ってにししと悪戯っぽく笑う彼女を見ていると心が少し和んだ。
「……あ! ひっじょーに申し訳ないんやけど一つだけお願い聞いてくれへんやろか?」
「言ってみなさい」
「劉備軍の徐晃っちゅうやつに会わして欲しい」
霞の口から思いもよらない名前が飛び出した。見つめる瞳は真剣そのもので、巡る思考の中で一つの事柄に結びつく。
「……華雄のこと?」
「あー、別に憎いから殺したいーとかそういうんちゃうねん。ただあいつの最期くらい聞いとこかと思うてな」
虚空を見上げる寂しい瞳はいかに華雄が彼女の大切なモノだったかを映し出している。
「いいでしょう。確か劉備軍は洛陽の街に居たはず。私も個人的に用があるし、着いてきなさい。……春蘭はここで休んでなさい。またお仕置きされたいのかしら?」
当然自分も着いていくモノと思っていたのか、隣に並んだ春蘭に掛けた私の言葉で彼女の表情は絶望に染まった。
「いい子にしてたら今日の夜にたんと可愛がってあげる」
耳元で囁くとぱぁっと表情が明るくなった。尻尾があればはち切れんばかりに振っているのではないかと思われる。
いってらっしゃいませー、と後ろから大きな声で言う春蘭に笑いを堪えながらの霞を連れて、私達は洛陽内部に向けて陣の外に出た。
†
橙色の斜陽が差し込む街角にて、慌ただしかった時間も過ぎ去り、皆が一様に休息を取る。
兵達がそれぞれに佇み、座り、笑いあう場所のさらに端にある休憩用の天幕の中、私と朱里ちゃんの目の前には地に足をつけて座る秋斗さんがいる。
「さて、説明して頂きましょうか。田豊さんと! 二人っきりで、何を、話していたんですか?」
お説教をする時の黒い影を纏った朱里ちゃんの、相手の名前を強調して紡いだ言葉にも、一つ肩を竦めただけで秋斗さんは沈黙を貫いていた。
朱里ちゃんによると、シ水関では既に秋斗さんと田豊さんは内密に真名を交換しているらしく、三刻ほど前には二人で話し込んでいる所を見つけたらしい。物陰に隠れて観察していたが頭を撫でている時に張コウさんの出現で良い雰囲気が壊れて秋斗さんは戻ってきた、とのこと。
「もしかしたら……恋仲なのかなぁ」
私への説明の途中で朱里ちゃんの零したそんな
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