夕暮れ、後に霞は晴れ渡りて
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じゃまたどっかで会おうねー」
「ああ、またな」
互いに軽く別れを告げてそれぞれ違う方向へ歩き出したが、明が早く話せというようにちらちらと見てくる。
「明、秋兄を勧誘したけど無理だった」
「へー。ま、そりゃそうでしょ。使える駒は増やさないとダメだけど今は揺さぶりだけでいいんじゃない?」
私の短い言葉である程度の狙いまで予測してくれたのか。
「ん、さすが明」
公孫賛さえ仲間に出来れば特別仲がいいと噂の彼も手に入るだろう。劉備軍で欲しいのは彼だけで、自覚のない偽善者なんか一人だっていらない。
でもどうしてだろう。秋兄と関わると何故か――――
「そういえば七乃には伝えといたよー。了解だってさ。」
「わかった。なら後は麗羽にも行動させるだけ。陣に行こう」
頭に浮かぶ疑問を振り切り、簡単な受け答えだけして二人で自陣に向かう。
あいあいさーと元気よく答える明の返事を聞いて、思考の中で自分達の策を確実にする方法を積み上げながら、私達はゆっくりと洛陽の街を抜けて行った。
†
洛陽内部の制圧と自軍が行う救援手配の進言が終わり、ゆっくりと街を歩いて兵への指示を終えてから城を後にし、城壁を出るや馬に飛び乗ってただ駆ける。
気を抜くと零れそうになる涙を気力で抑え込み、這い上がる恐怖を自身への叱咤で叩き伏せる。されどもただ速く速くと急く心は止める事ができなかった。
陣の入り口にて自分を見る兵に愛馬を戻しておくように簡単に指示を出し、陣内の目的の場所まで全速力で疾走する。
すれ違う自身の将達の顔色は皆悪く、最悪の事態が頭を掠めるもすぐさま否定し脚を動かし続けた。
「春蘭!」
天幕の入り口を切り裂くように開け放って飛び込むと真横を愛しい彼女が抜けて行った。
「待ちなさい! どうして逃げるの!?」
「……っ!」
声を掛けても返事すら返さずに駆ける彼女を追いかけ続ける事幾分、やっとの思いで捕まえて引き倒し馬乗りになる。
それでも両手で顔を隠す彼女のこめかみに一本の糸が見えた。
「……手をどけなさい、春蘭」
「出来ません! このような醜い姿など華琳様にお見せするわけには!」
叫ぶ彼女の手を優しく掴み、耳元に口を近づけて出来る限り甘い声で囁く。
「戦は終わったのよ。疲れた私に愛しいあなたの顔を見せて癒してくれないかしら? それとも私の顔を見たくない、春蘭は私の事が嫌いになった。そういうこと?」
私の言葉にビクリと跳ねる彼女からは嗚咽が漏れだし、少し時間を置いてゆっくりと手をどけて泣き顔を見せてくれる。負傷報告のあった眼には蝶の眼帯がつけられていた。
「すみません、華琳様、このような――」
「どうしたというのかしら? あなたは何も変わりない。私の愛しい、大好きな春蘭のままじゃない」
自分の心が泣き
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