夕暮れ、後に霞は晴れ渡りて
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の原因はあいつ、劉備だ。この人と劉備が違う所にいるとこれほどまでしっくりくるのだから。
どちらも徳高き行いをするのは同じだが本質的な部分で二人は決して相容れない、そういう事か。
子供たちをあやす彼の様子はまるで年若い父親のよう。きっと彼の本当の姿は戦場を鬼神の如く駆けるモノではなく、平穏を精一杯堪能するこの時なんだ。
ずっと見守っていたいような衝動が湧いてきたが、ふるふると頭を振って追い払い、優しい表情の彼に声を掛ける。
「秋兄、ちょっと二人で話がしたい」
言うと彼は少し不思議そうな顔をしたが、何か考えたのか子供たちに静かに声を放つ。
「お前達、すまないがあっちのねーちゃん達の方へ行ってくれるか? 大丈夫、後でちゃんと遊んでやるから、な?」
その声に不満顔ながらも子供たちは渋々といった感じに離れ、劉備たちの元へ駆けて行く。彼は笑顔で見送り、こちらに向くとクイと親指で人の少ない通りを指し示した。それを見てコクリと頷くと彼はゆっくりと歩きはじめ、それに倣って二歩ほど後ろを付いていく。
着いたのは人の多くない、それでいて開けた場所。誰にも聞かれないように配慮してくれたのか。
「それで、話ってなんだ?」
合わせた瞳からは前のようには心の内が見透かせない。疑念なのか、警戒なのか、信用なのか。唯一感じ取れたのは一つの感情だけ。
吸い込まれそうなほど深く、呑み込まれそうなほど昏い……絶望。先程の穏やかな瞳は何処へ行ったか、何故これほどまでに正反対に切り替わったのか私には分からなかった。
この短期間でこの人に何かあったのか。目の下にはしっかりと確認しなければ気付かないほどだがほんのうっすらと浮き上がる隈が見て取れた。
しかし今は気にする事ではないと意識から切り離し自分の要件を告げる事にした。
「私達を助けて欲しい。袁家に従うしかない私達を」
この人は優しいからそれを利用しよう。嘘じゃないから見破れない。断られたとしても楔を打ち込んでおける。
「袁家はこれから二分される。あえて名前を付けるなら、あるのは欲望のみで手段を問わない濁流派と正統に大陸を救うために動く清流派。私達清流派はずっと耐えてきた。それも今回の戦でおしまい。これから本格的に袁家の改革に動く手はずになってる」
するつもり、というだけ。今後の動きで見せかけの対立を示すことが出来るし大丈夫。
「……具体的にどうしろと?」
「私達の軍に来てほしい。今回のあなたの手柄の大きさなら所属移動も簡単に出来る。あなたの評判はこれからどんどん上がる。それは民にとっても、兵にとってもこれ以上ない標になるだろうから協力してほしい。袁家を内部から変えるためには有力な将が足りなさすぎるから」
道すがら耳に入ったが、大義の人、大徳の将、なんて呼ばれ始めている彼はこれか
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