夕暮れ、後に霞は晴れ渡りて
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さて、私もちゃんと仕事を終わらせよう。
†
決戦の次の日、戦後処理をある程度で切り上げ、私は麗羽と共に正装を着て都の上層部に掛け合いに向かった。詮議の日取りを決め、洛陽の復興に対して自分達が総まとめを行うために。
しかし曹操が先に大長秋と面会して復興の許可を貰ってある事を聞いた時は驚いた。本当に機というモノを良く理解してる女だ。これで曹操だけは自由に動ける事になり、長い期間洛陽に留めておく事が難しくなった。滞在期間を延長させる事によって様々な効果を出せたというのに。
お先に、と去り際に勝ち誇った表情で残した一言が麗羽の対抗心を強く煽ったようだが、相変わらずせっかちさんですわね、と優雅に受け流していたのには少し笑えた。
まあいい、私達も同じように自由に動ける。ただ同等の条件になっただけ。
そう自分を納得させようと心の中で呟いても、浮き上がる不安と苛立ちは消えなかった。
褒賞として与えられる支配域により、こちらの領地が圧倒的に多くなるので公孫賛を無視し最速で侵略しても確実に勝つには時間が足りない。だから時間をゆっくりと掛け、外堀から埋めて行かないと。
その為に徐州の州牧に劉備を推挙しておいた。あれには餌になってっ貰う。欲を言えば首輪付きの飼い猫の牙を一つくらいへし折って欲しい。その辺りの事は七乃に伝えるよう明に頼んでおいたけど。
八つ時に謁見等をすませて麗羽と城の前で別れ、着々と思考を積み上げながら洛陽の街を歩いていると、劉備軍の面々が炊き出しをしている現場に着いた。将や軍師達、さらには劉備本人でさえ忙しく動き回るその場所は活気と笑顔に溢れ、戦火の後とは思えぬほど。
なるほど、これこそが劉備軍の本質か。
少し侮りすぎていたかもしれないと今までの自分の評価を改め、これからどう崩していくかの思考に今見ているモノを組み込んでいく。
そこで一つのおかしな事に気付いた。
どう考えても一人の男が当てはまらない。異質に過ぎるその男は目の前の現状に合わなさすぎる。
「ん? 夕か?」
後ろから掛けられた声に振り向くと件の男が……身体の至る所に子供をくっつけて立っていた。背中に一人、腕にぶら下がる一人と抱き上げられている一人、両足に群がる四人。思考に潜るのに集中しすぎてこんな異常な物体に気付かなかったのか。
しかし……その姿はあまりに滑稽だったがなかなかどうして似合っていた。
「……秋兄。無駄に似合ってる」
「ありがとう、今の俺には最高の褒め言葉だ」
一つ返事の後、にっと笑って子供たちをあやしだす。同時に兵に指示も出しているが彼の兵達からは一寸の不満の感情さえ見当たらない。
彼のそんな状態を見て先程の違和感が露と消え、彼への理解がまた深まった。
この人は二面性を持っている。そして、多分違和感の一番
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