夕暮れ、後に霞は晴れ渡りて
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、張遼の心の哀しみを映し出しているように思えた。
「徐晃」
ゆっくりと流れる静寂を打ち破ったのは一人の覇王。こちらを見据えるアイスブルーの眼光は厳しく、揺るぎない。
「成果は順調、と言った所?」
何が、とは言わなくても分かる。桃香の事だろう。曹操の言葉に張遼は不思議そうな表情で俺達を交互に見やる。
「そうですね。最低限は突破しましたから」
多くを語らずとも彼女には伝わるだろう事は分かっている。俺の返答に笑みをさらに深めて、まるで恋焦がれる乙女のような顔をした。
「器から溢れ出るのか、器が包み込むのか、楽しみにしているわ。そうね、もし万が一行く先に困ったなら私の元に来なさい」
曖昧な言葉の意味は理解出来た。俺が桃香の代わりに王をやるのか、それとも桃香が王として完成するのか。それが彼女の言葉の真意。
桃香が無理な時は……俺が代わりにこの世界の『劉備』を演じる。優しすぎる桃香にとって乱世は厳しく、辛いモノだから。覇道に対抗する、大陸の民の為の自浄作用を担う希望の役割は必要不可欠だから。
暴走というのはどんな王にも起こりうる事態で、人となりのみを信じるのは愚かな事だ。
天下三分か天下二分、後の大陸統一が終わってからもそのシステムは暴走への対抗策として生きることだろう。
史実の孔明や周瑜などの英雄たちは本当に凄い。そこまで見越してその策を発案したのだから。
曹操の元へ行って己自身で自浄作用の役割を担えないのは、腹立たしい事にあの腹黒少女の任務のせいだったが、この世界の劉備が桃香であるなら納得が行く。
俺に与えられた役割は桃香を成長させる事か、もしくは代わりに『劉備』になる事なんだろう。
そして……この怪物を倒さないといけないのか。
「そのような事態にはなりませんよ。信じておりますので」
自分で言って少し笑いそうになった。完全には信じていないくせに。
曹操は目をすっと細めて俺を見やり、獰猛な笑みを浮かべて口を開いた。
「ふふ、あなたは気付いていないのね。……まあいいわ、劉備軍にはこちらから糧食を分けるから炊き出しの足しにしてほしい。我が軍は治安維持と家屋の建設、区画整備等の都の復興作業に集中したいのよ。
軍師達と相談して後日使者を頂戴ね」
「……わかりました。伝えておきます」
最初の言葉が気になったが思考を重ねても答えは出ず、とりあえず曹操からの提案に頷き返す事にした。
「霞、私の要件は終わったけれど、あなたはもういいのかしら?」
「おお、せやな。うちもかまへん。すまんな徐晃、手間取らせて」
曹操に言われて少し肩を竦め、俺に向け片手を上げにへらと笑う彼女にはもう憎悪の色は見当たらなかった。
彼女も武人。戦場の生き死には割り切っているということか。
「ではまた乱世で会いましょう」
「
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