夕暮れ、後に霞は晴れ渡りて
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夏候惇との一騎打ちに敗れた張遼は曹操軍に降り、呂布や陳宮も抜けた洛陽での戦にはもはや主だった将はおらず、残党の制圧を残すのみとなり、張遼が降った事を知った残党は烏合の衆に等しく、制圧はあっけなく終わった。
桂花とは一寸だけ目が合ったが、何かを決意したのか強い眼光で私を射抜いてきた。負けないわよ、と言うように。
そんなに噛みつかなくてもいいのに。あなたとあなたの主は袁家の改善には必要不可欠だからそっちを私達が叩き潰した後で下に付いて欲しいな。
会話もせずにそんな思いは伝わるはずも無く、私がすっと目を逸らして田豊隊と袁紹親衛隊に指示を出し始めるとすぐに別の所に行ってしまった。
そんな折、一つの報告が私の耳に入った。
「田豊様。郭図様が洛陽内部にて策略成功、後処理はこちらでやっておく、との事です」
一番耳にしたくない名前を聞き、込み上げる不快感に思わず顔を顰める。
あのクズ……私達の本城にいると思ってたけど最初から入り込んでいたのか。通りで時機が的確に過ぎると思った。しかし成功といいながらもあのクズは詰めがなってないはず。わざわざ報告を私の所に送ったのはそれを隠すためだろう。どうせ董卓や賈駆を捕えられず、それを誤魔化す為に適当な人を殺して仕立て上げようとしているに違いない。
「ん、わかった。下がっていい」
これ以上関わりたくない気持ちと、あれは私が何を言っても反発するのが目に見えているので短く返答を行い伝令を下がらせ、一つ大きく息をついて、隣で未だ震えている麗羽の方を向いてこの後の動きを言っておく。
「本初、顔良は既に洛陽内に向かわせた。これから文醜も向かわせる。明には城外で私達と共に制圧の指揮を執って貰う。その後、最後に堂々と連合総大将として洛陽に入るから公路に伝令も送っておこう」
こちらの意図は分かってくれるだろうか。麗羽も頭が悪くは無いからこれを機に学んでいってほしい。少し考えさせてみよう。
「どうしてそうするか……分かる?」
尋ねると彼女は青ざめた表情のままだったが、コクリと一つ頷いた。
「……そうですわね。何も関係ありませんわ」
麗羽の一言で全てを理解しているのが分かった。彼女はやはり頭がいい。思考させるまでもなかったか。
二枚看板と謳われる二人を洛陽内に送ることで民にこちらの助けたいという気持ちを示し、自分達が残る事で強力な将がおらずとも戦を最後まで行いきった姿勢を見せる。その後、堂々と入ることで洛陽大火が袁紹軍とは関係ない事をしっかりと意識づけ出来る。根回しくらいしているはずだからこれで問題ない。
「さすがは本初」
短く褒めると私の言葉の真意を悟ったのか自身の震えを抑え付けて胸をキュッと強調するように突出し、不敵な笑いを携えた口の傍に優雅な仕草で手を添える。
「お〜っほっほっほ! 当然
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