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誰が為に球は飛ぶ
青い春
拾弐 脱皮
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思った。
しかしすぐにマウンドの藤次に向き合う。

「よーし!サード打たそうサード!」

敬太がサードのポジションで球を呼ぶ。
その隣、ショートのポジションには青葉。
ショートからサードに、コンバートされていた。

「ガキッ!」

インコースの直球に右打者が詰まる。
その打球はコロコロと三遊間へ。

(僕だ!)

敬太は反応し、打球を追う。打球は思いのほか手元に来るのが早く、差し出したグラブの先を抜けた。

(あっ!)

ヒット、と敬太が思った時には、その後ろ、深い位置で手を伸ばして追いついた青葉が身を翻してランニングスローを決めていた。
悪い体勢から投げられた山なりの送球は、しかしファーストの多摩のミットにしっかり飛び込んだ。

「アウトー!」

審判の手が上がると同時に、ネルフ学園のベンチからワッと選手が飛び出してきた。


ーーーーーーーーーーーーーーー

「よし、じゃあミーティング始めるぞ」

試合後、球場外にて円になって座ったネルフナイン。その輪の中心には日向。加持は輪の外で見ている。光からスコアブックを手渡され、日向がミーティングを始める。

「最終スコアは8-3、安打はウチが13、相手が7…うん、打撃はよくバットが振れていたな。春休みからの好調がそのまま出せた。ランナー貯めて剣崎、というパターンもよく作れていたな。守備は特にバッテリー、藤次と薫がよく落ち着いてやった。ショートの青葉も一年ながらよく元気出してやってた。ベンチもよく声が出てて、良い雰囲気の中で野球できたと思う…」

日向の言葉が急に途切れる。
周りも、日向の様子がおかしいのはすぐに気がついた。日向は泣いていたのだ。
メガネの奥に涙がポタポタと零れている。

「いやっ…そのっ…何だっ……まあ、みんなを信じて無かった訳じゃないんだがっ…かっ…勝てて嬉しいっ…ホッとしているっ…」
「日向さん…」

一年生達はブロック予選の初戦で勝ったくらいで泣く日向に首を傾げているが、真司には理由が少し分かった。去年の秋、自分を野球に誘った時、「大会で一度も勝った事が無い」と言っていたような気がする。日向にとってはそれが悲願だったんだ、と真司は思う。それに結局貢献できなかった自分は、結構情けない。

輪の外に居た加持が立ち上がり、パン、と手を叩いた。

「ま、初勝利おめでとうってトコだな。これからこの野球部かいくら勝ちを積み上げていこうと、初勝利、これはお前らのモンだ。初勝利は、今日この日のこの勝ちしかない。だが、これはスタートだ。ここから始まるんだ。これが終わりじゃない。それだけは皆が心に持っておいてくれ。」
「せやせや!ワイらこんな所で終わるよな奴らやないで!一気に甲子園やー!」

加持の言葉に、藤次
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