青い春
拾壱 春一番
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しいコースを避け、「日向が捕れるコース」に投げるよう気を遣ってるように見える。この春の練習試合はそれでもほとんど打たれなかったが、この先はどうだろうか?上のレベル相手ではどうだろうか?
日向はそもそも、身体能力が高いわけではない。真司の能力を引き出そうとするなら、早めに相応しい奴に捕手をやらせるべきではないだろうか?
「日向さん!早よこっち見てくださいよ!」
考えに耽る日向を、マウンド上の藤次が現実に引き戻す。慌てて日向は、使い込まれたミットを構えた。
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「あっ、マジかよ」
時は移って、入学式の後。
グランドに集まってきた、入部希望の一年生を見て、健介が声を上げた。
「ああ、せやな。可愛いわ。」
「そっちじゃなくて、その隣のロンゲだよ」
長い赤毛を二つ結びにして、眼鏡の奥の目を妖艶に光らせている少女の方に目を奪われていた藤次を健介は小突く。
「あいつ、桜庭中の青葉茂だぜ?全日本準優勝の1番バッターだ。こりゃたまげたなぁ」
中学の軟式野球は全日本と全中の二つがあり、全日本はクラブチームや各地方の選抜チームによる大会である。この細面に長髪で少し生意気そうな目つきをした少年、青葉茂は、中学時代は地域の選抜チームに参加して予選を勝ち残り、レギュラーとして全日本選手権で決勝にまで進出した。
ネルフ学園にはそうそう居ないキャリアの持ち主と言えよう。
「じゃ、一年生達、自己紹介をしてくれ。誰からでも良いぞ」
日向がそう言うと、新入生は目を見合わせる。こういう時、中々最初に言い出す奴が決まらないのはよくある事だ。
「フッ…」
青葉がやれやれ、と仕方なさそうな顔をして一歩踏み出しそうとした時、誰かがその横をスルッと通り抜けた。
「こんちゃーっ。黒崎中学から来ました、真希波真理ッス。マネージャー希望でーす。センパイみんなよろしくおなしゃーす」
くだけた挨拶をしながら体をくねくねさせて愛嬌を振りまいたのは、先ほどの眼鏡の少女、真希波真理である。顔立ちは彫りが深めで鼻が高く、赤毛も併せて少し外国人っぽい。新入生ながら背は高めで子どもっぽさは無く、それなりの美人であった。
「おお!よう来てくれたなあ真理ちゃん!」
「洞木とは段違いに可愛いぜェ!」
「よろしくしちゃうよォ!いくらでもよろしくしちゃう!」
藤次に健介、そして多摩のスケベ3人は真理の自己紹介に一様にテンションを上げる。
その反応に対して会釈を真理が返すと、3人揃って「かんわぃーーーー!」と歓声を上げた。
「もう、バカコンビに比べて多摩さんまで…ねぇ、日向さん」
呆れた光が、日向に目をやる。
日向は目を見開いて真理を見ていた。
口を固く結んで表情を緩ませない
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