第三章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「それを考えると」
「いえ、何故なら」
「何故なら?」
「私も共にいたいと思いはじめてきました」
こう公爵に言うのだった。
「共にいるうちに」
「私とですか」
「はい、貴方を見ていますと」
その彼をだというのだ。
「その全てが」
「私の全てを好きになってくれたのですか」
「花がお好きですね」
まずはこのことを問うた。
「薔薇も百合も」
「昔からです」
「そして寄付を忘れないですし」
「経済的に困っていないのなら」
それならとだ、公爵はヴィルヘルミナに淀みなく答えた。
「それは人として当然のことです」
「人として、ですね」
「幼い頃からそう教えられてきました」
だからそうしているとだ、公爵は若い妻に話した。
「貴族である以上に人としてそうしなければならないと」
「家の人達も公平で労わりますし」
「彼等も家族です」
家に仕えるメイドやシェフ、運転手達のことだ。執事もそうである。
「家族に対しても公平でなければなりません」
「そして労りを忘れずにですね」
「そうです」
尚この時代では家の主なり奥方なりが家の使用人やメイドに手をつけることは法律で禁じられている、双方に不倫な関係がない恋愛関係ならば話は別だがかつてのローマ貴族やその法にならった欧州貴族の様な法はない。
「人なのですから、命があるのですから」
「命ですか」
「無論これは動物や。その花達もです」
公爵は家にいる動物達にも優しい、そして花のことも話した。
「生きているのですから」
「だからですか」
「政治家は時として非情にならねばなりません」
彼も政治家として非情な決断を下したことがある、多くを救う為に少数を切り捨てる法案を出し可決させたこともある。
だがそれでもだ、彼は政治家としても普段はだったのだ。
「人であるのなら」
「人間らしくですね」
「そうありたいと思っています」
これが妻への返答だった。
「私は常に」
「そのあなただからです」
ヴィルヘルミナは微笑んで公爵に述べた。
「私はいつもお傍にいたいと思う様になりました」
「そうなのですか」
「それに」
ヴィルヘルミナの言葉は続く、次に言うことは。
「私はあなたと共にいると安らぎを感じます」
「安らぎ、それをですか」
「はい、感じます」
そうだというのだ。
「これまで以上に。家にいた時よりも」
「だからですか」
「私は確かに子供も欲しいです」
女としてだ、母になりたいと思っていることも事実である。
「ですがあなたがそれがもう適わない身体ならば」
「それでもいいのですか」
「はい、私はあなた以外と共にいたくありませんので」
だからだ、他の男を愛するということもだというのだ。
「それで構いません」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ