第三章
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「逃げるか」
「ああ、そうしような」
こう話してそしてだった、二人はキオスクに飛び込んだ。そしてそこでキオスクのおばちゃんに自分達が見たことを必死の顔で話した。
だがそれでもだ、話を聞いたおばちゃんは笑って言うのだった。
「あはは、そんなことないよ」
「いや、本当にいましたから」
「あったんですよ」
「ゴム人間に裂けたチケットに青い電車が」
「全部この目でさっき見たんですよ」
「あたしも裂けたチケットのことは聞いてるよ」
恰幅のいいおばちゃんは腕を組んで余裕のある仕草で述べた。
「けれどね、あんなのはね」
「嘘だっていうんですか?」
「只の噂だって」
「そうだよ、あたしが見るのは普通の青い電車だけだよ」
それだけだというのだ。
「そんな裂けたチケットもゴム人間もね」
「いえ、本当にいました」
「裂けたチケットを持って青い電車に乗れば」
「それで異次元に行ってしまうんですよ」
「ゴム人間の世界に」
「まあ話は聞いたよ」
おばちゃんは二人の言うことを聞かない訳ではなかった、ちゃんと聞いてはいた。
だがあまり信じていない様子でだ、こう二人に言った。
「けれどあたしはね」
「本当にいましたから」
「嘘じゃないんですよ」
二人はまだ言う、そしてだった。
青い電車が出てからだった、周囲に警戒をしながらキオスクを出て二人が来た方に行く電車に乗って駅から逃げ去った。それからだった。
二人は鉄道仲間にその口から、そしてネットの掲示板やツイッター等でこのことを語った、しかも見たのは二人だけでなく。
何人も見た、そのチケットとゴム人間と青い電車を。それでこの駅の話はまことしやかに話される様になった。
「あの青い電車は異次元に行く電車か」
「ゴム人間の世界か」
「裂けたチケットを持って青い電車に乗ったらまずいんだな」
「それで連れて行かれてか」
「ゴム人間になるのか?」
「それとも食われるのか」
そんな話になった、鉄ヲタ達はこの話を本気でしていた。
そしてその話を聞いてだ、その駅のキオスクのおばちゃんは駅の駅長、初老の老人に対して笑って言った。
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