第五章
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「雨でも飲もうね」
「憂さ晴らしでもね」
「いい店知ってるんだよね」
「食べ放題飲み放題、三四八〇円だよ」
「いいね、じゃあね」
「今日はそれでいいね」
「飲もうか、それでまた明日だよ」
「うん、それで」
こうした話をした、そして。
九回裏、阪神の最後の攻撃を観る。すると。
まず先頭打者が四球で出た、それからだった。
ヒット、それもツーベースが出た。あっという間に二塁三塁だ。
おまけにノーアウトだ、雲は一気に晴れた。
それは周りもだ、阪神を愛する同志達が賑やかになる。
「よし、逆転や!」
「一発長打や!」
「巨人をいてこませ!」
「とっとと東京に帰れ!」
「今年は阪神優勝じゃ!」
こんなことを言う、そしてだった。
僕もこれは、と思った。知人も今は黙っている。
まさに正念場だ、そしてここで。
ホームランが出た、菅野の頭上を遥かに越えてバックスクリーンを直撃した。日本ハムの指名を断って巨人に縁もあり入った男に天誅が下った。
阪神の鮮やかなサヨナラ勝ちだ、一塁側は沸き立ち三塁側はすごすごと立ち去る。晴れと雨が同時にある。
僕も思わず立ち上がった、そして同じく立ち上がった知人と。
にやりと笑い合い握手をしてだ、こう話した。
「勝ったね」
「うん、見事にね」
本当に鮮やかだった、今の気分は快晴だ。
阪神が勝った、しかも相手は日本国民共通の敵巨人だ。
これで晴れじゃない筈がない、僕も知人も大喜びで祝勝の為三四八〇円の食べ放題飲み放題の店に向かった。
店に入りまずは二人でビールを頼んだ、肴は適当にそれぞれだ。
そのビールのジョッキで乾杯して一口飲んでから、僕はこう言った。
「晴れ晴れとした気持ちだね」
「阪神が勝ったからね」
「それも巨人にね」
尚且つ意固地に巨人に行った菅野にサヨナラホームランを浴びせての勝利だ、これで嬉しくない筈がなかった。
「よかったよ」
「だから晴れだね」
「それは君もだよね」
「当たり前じゃないか」
知人は澄ました感じではあったけれど笑顔で僕に答えた。
「これで嬉しくない筈がないよ」
「だから今飲むこれも」
ビールもだった。
「美味しいね」
「勝利の美酒だね」
まさにそれだった、僕達ファンにとっても。
「曇りから雨になりそうだったけれど」
「それが一気に変わったね」
「全くだよ、まさに日本晴れだよ」
それになった、僕達阪神ファンにとっては。
「本当によかったよ」
「いい観戦が出来たよ」
「いつもこうならいいんだけれどね」
勝利、即ち晴れならだ。本当にそれで終わるのなら悪いことはない。
しかし勝敗はスポーツの常だ、ましてや阪神は絶対のないチームだ。負けることもわりかし多いチームである。
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