第四章
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「野球の方はね」
「雨になって欲しくはないね」
「阪神はね」
巨人はドシャ降りどころが台風でも構わなかった、それも百年程。
「快晴であって欲しいよ」
「全くだね、けれどね」
「この一点がね」
重い、阪神にとっては。
「阪神は完封負けも多いからね」
「そういう時に限って相手チームは一点なんだよ」
阪神投手陣が頑張って相手を一点に抑えるのだ、だがなのだ。
こちらは二点取ればいいのにだ、二点はおろか。
「完封負けばかりで」
「阪神はどうしてこんなに打てないのかな」
「伝統だけれどね」
本当に不思議な位打たない、投手陣はこれまた不思議な位揃っているがそれでもなのだ。
阪神は打たない、それでなのだ。
「これが」
「今日も勝って欲しいけれど」
「どうなるかな」
僕達はこの一点に深刻なものを感じていた、これがいてまえ打線やビッグバン打線なら一点どころか三点でも平気でひっくり返せるだろう、しかし阪神なのだ。
一点すらわからない、それでだった。
僕達は暗い、曇りで試合を観ていた。試合は五回六回と進み。
七回になった、だがそれでもだった。
阪神は打たない、本当に打たない。ヒットが出てもフォアボールでもそれが面白い位チャンスにつながらない。
まさに阪神だ、僕達がよく知る阪神だ。僕は曇りの顔でこう知人に言った。
「若し負けたら」
「どうするんだい?」
「飲みに行くかい?」
憂さ晴らしにだ、こうしようかと提案した。
「そうするかい?」
「じゃあ勝てばどうするんだい?」
「それでもね」
あまりそうは思えないがだ、勝てばどうするかという問いにはこう答えた。
「飲みに行こうか」
「同じだね、それじゃあ」
「心境が違うよ」
負けて憂さ晴らしと勝って祝いではだ、本当に違う。
「だからね」
「そうだね、それじゃあね」
「飲みに行こう」
こう話してそしてだった、僕達は試合終盤も観続けることにした。しかし阪神は一点を取れないチームである。
八回も駄目だった、九回表も投手陣は踏ん張ってくれる。
一対零のまま九回裏となった、だが。
周りではだ、自嘲めかしてこんなことが話された。
「これでまた完封負けや」
「今シーズン何度目や」
「ほんま完封多いわ」
「一点か二点がほんま取れんわ」
「そやから勝てん」
「今年もあかんわ」
毎年聞く言葉だ、もっと言えばシーズン中は毎日だ。
三塁側はもう勝った気持ちだ、本音を言えば三塁側に誰も死なないバズーカを撃ちたくなっている。
気持ちは曇りから雨になろうとしている、だがそれでも僕は試合を観続けている。
知人もだ、彼は僕にこんなことを言ってきた。
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