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女王の決断
第一章
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                   女王の決断
 大臣達は必死だった、エリザベス一世イングランドの女王である彼女の前に片膝を付いて一礼してから言うのだった。
「陛下、最早です」
「その時が来たとしか申し上げられません」
「ですからどうか」
「ご決断を」
「サインをせよというのですね、私に」
 細長い鋭利な顔だ、髪は茶色で縮れており目は黒い。
 白いカラーが目立つ赤のドレスを着ている、この女性が躊躇する顔で言うのだ。
「彼女を処刑を命じる書に」
「お願いします」
「最早それしかありません」
「貴女達は残酷な方々です」
 女王エリザベス一世は苦渋に満ちた顔で彼等に言った。
「非常に」
「ですがこれ以上メアリー女王を置いておく訳にもいきません」
「それは出来ません」
 大臣達も必死の顔で言うのだった。
「スコットランドが不穏な動きを見せ続けています」
「それに国内のカトリック達も」
 イングランドの宗教は国教会だ、エリザベス一世がその主である。だが国内にはカトリックも多く彼等は同じカトリックであり女王の縁戚でもあるスコットランド女王メアリー=スチュアートを支持しているのだ。
 女王は今幽閉されている、それも十九年の間だ。その十九年の間メアリーを旗印にしたカトリックやカトリック諸国の工作が相次いでいた。
 そしてだ、やはり幾度もだ。
「陛下の暗殺も狙っていたのですぞ」
「しかもメアリー女王ご自身が主導した」
「それも幾度もです」
「ですからもう」
「これ以上は」
「彼女が誰なのかわかっているのですか」
 しかしだ、まだ言う女王だった。必死に拒む顔でだ。
「スコットランド女王です」
「そして陛下の縁戚ですね」
「そうだと仰るのですね」
「そうです」
 家臣が女王を裁くことは許さない、しかもだ。
 女王にとっては彼女を裁くことは出来なかった、何しろ縁戚だからだ。こうした複雑な事情があったのである。
 それでだ、女王は今も言うのだ。
「それはなりません」
「ではこのままですか」
「このままメアリー女王をあの城に幽閉しておくのですか」
「カトリックや諸国が工作の旗印にするというのに」
「そしてメアリー女王ご自身も陛下のお命を狙いますぞ」
「これからも必ず」
「幾度も」
「しかしそれでもです」
 躊躇、いや明確な拒絶だった。女王はまだ言うのだった。
「私は死刑執行のサインはしません」
「最早国民も議会もそう主張していますが」
「それでもですか」
「まだ、ですか」
「我々も彼等を抑えられませんが」
「ですから」
「若しもです」
 女王は愚かではない、それでだった。
 女王としての誇りを失わずにだ、大臣達に言うのだ。
「彼女を処刑すればカトリックであるフランスやスペイン
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