第四章
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「入ろうか」
「ええ、それじゃあね」
「中の状況確かめよう」
そして十字架を探したかった、けれどだった。
この状況では絶望的だと思っていた、見つかることはないと。
けれど今はそのことはあえて言わないでアパートの階段を登りそしてだった。
部屋の扉を開けた、扉は鍵をかけていなくてそのまま開いた。
そこから中に入ると酷かった、もう何もかもが落ちて転がっていて滅茶苦茶だった。
彼女もその中を見た、それでこう言ったのだった。
「酷いわね」
「うん、本当にね」
「予想はしていたけれど」
「そうだね、それでもね」
「整理しよう」
彼女から僕に言って来た。
「そうすれば若しかしたらね」
「そうだね、見つかるかも知れないし」
十字架のことをここでも話した、そうしながら。
僕達は玄関で靴を脱いで中に入った、玄関も靴がかなり乱れて転がっていた。
その靴達も整理して入口のところから整理していく、埃もかなりある。
彼女は水道を捻ってみた、けれどだった。
「出ないわね」
「やっぱり止まってるんだね」
「ええ、そうみたい」
「じゃあ暫くは本当にね」
「そうね、復旧するまではね」
本当にそれまではだった。
「体育館にいることになるわ」
「やれやれだね」
「仕方ないけれどね、けれどね」
「整理してね」
「そうしよう、今は」
彼女もまた僕に言ってくれた。
「二人でね」
「そうだね、僕の部屋だけじゃなくて」
「私のお部屋もなのね」
「整理しよう、けれど考えてみたら」
「どうしたの?」
「いや、震災の後は火事場泥棒とかが多いから」
泥棒ならまだいいけれど治安が悪くなる、それでだった。
「おかしな奴も多いからね」
「お巡りさんがいないこともあるから」
「あまり出歩かない方がいいかもね」
「じゃあ今も?」
「すぐに帰ろう」
多少整理してそうしようと、僕は彼女に提案した。
「君のアパートに行くのもね」
「その時もなの」
「うん、本当に変なのに遭ったらまずいから」
特に夜出歩くことは考えられなかった、そんなことをすればそれこそどうなるかわかったものではないからだ。
「そうしようね」
「その方がいいわね」
「今も少し整理して」
考えが変わった、被災地には自分の部屋であっても長居は危険だと考えた。
それで僕達がゲームをしていた部屋には今は入らないことにした、本当に入口の前だけ整理した。
それで帰ろうと思った、十字架はもう諦めていた。
だがここでだった。彼女が自分の足元を見て僕に言って来た。
「あったわよ」
「あったって?」
「はい、これ」
僕に笑顔でそれを差し出してくれた、それはあれだった。
探していたものが目の前に差し出された、僕はそれを見
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