五幕 硝子のラビリンス
4幕
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傷を消す自体は治癒術でもそう時間はかからない。ただし治癒術で治せるのは傷だけで、痛みや違和感が患部に残るのが常なので、結局は時間薬なのだ。
フェイもまた、エリーゼが銃創自体は綺麗に消したが、足に食らった分で立ち上がれるまで待つことになった。
「フェイさん、聞いてもよろしいですかな」
「なぁに?」
「先ほどは庇ってくださってありがとうございます。ですが何故あのようなやり方を?」
「ワルイコト……だった?」
「いいえ。ですが私が無事でも、フェイさんが傷ついて、私が悲しいと思ったのですよ」
「んとね。〈温室〉に居た頃、算譜法は人に向けて使うなって研究所の人たちに言われたから。魔物とかモノしか打ったことなかったし。間違ってコロしちゃったらイケナイから、使わないでおいた」
それはつまり、間違えばジランドを殺しかねない術を放つことができたと言っているも同然だった。
ローエンは悟る。この少女は精霊術を通常とは逆の意味で使いこなせていないのだ。術を発動すれば100%の威力で100%成功する。手加減を知らないのだ。
「じゃあ、どうしてアスカにはあんな……」『ヒドイことしたのー?』
「ヒドイ、コト?」
『封印した時、アスカ痛がってたよー。フェイはアスカ、キライなの?』
その時、ずっと眠そうな半眼だったフェイの赤目が、険しさと憎らしさをはっきり示した。
「フェイが精霊、キライなんじゃない。精霊が、フェイをキライなの」
「精霊が? どういうことですか」
「エレンピオス人は黒匣で精霊をたくさんコロスから許せないって。でもエレンピオス人には霊力野がないから何言ったって届かない。そんな時、わたしが来たの。エレンピオスでたったひとり、精霊の声を聴けて、精霊と繋がれる。だからフェイがみんなの分を肩代わりしろって。エレンピオス中の人たちを代表して、お前が苦しめって」
「そんなのメチャクチャです! フェイが悪いことしたわけじゃないのに!」『リフジンだー!』
フェイは思い出すように赤い眼をぼんやり漂わせる。
「アスカの光眩しくて、体真っ赤になって、皮がペリペリむけた。シャドウに真っ暗なとこに入れられて、元に戻ったら目よく視えなくなってた。実験とか計測とか、着けてた機械からバチバチって流れ込んできたのはヴォルトかな」
淡々と語られる所業には主体性がない。受けた苦痛を、まるで己でないかのように認識をすり替えることは、防衛機制として珍しくない。軍人だったローエンは、新米兵士がそれを無意識の内に実行する様を多く見てきた。
「微精霊からもマナいっぱい取られて息止まりそうになった。後から研究所の人に聞いたら、本当は精霊に言われた量ほどたくさんマナあげなくてよかったみたい」
「
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