暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第79話 我が前に……
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と振り抜かれる一振りのクトゥグアの触手。そのたった一振りの触手により、上空に展開した飛竜の隊列が乱れ、一瞬の内に数体の飛竜と、その背に存在した騎士が蒸発させられて仕舞った。

 流石に、これはマズイ!
 先ほどまでよりもやや小ぶりの炎の触手ながらも、今のここは通常の理が支配する世界。これ以上、こんな太陽のプロミネンスに等しい熱量を放つ存在に居座られる訳には行かない。
 後に与える影響は予想が付かない。更に、現在も十分、危険度は高い存在で有る事に変わりはない。

「アリア、ブリギッド。一度だけ、一度だけで良い。俺と霊道を繋いでくれ!」

 自らの手の平を切り裂き、其処からあふれ出す鮮血により指先を紅に染め、そう叫ぶ俺。

「策が有る、と言う事ですか?」

 振り返り、何時もと変わらぬ真面目な表情で俺の事を見つめるシモーヌ姉ちゃ――アリア。

「ちょっと、こんな場面で一体、何を言い出す――」

 こちらは何を勘違いしたのか少し上気した顔を俺の方に向け、かなり上ずった声と口調でそう怒鳴り声を上げ掛けるブリギッド。
 但し、もう鬱陶しいし、ついでに説明を行う時間もない。少し気色ばんだ雰囲気を発しながら、俺の事をその強い光を放つ瞳で睨み付けている彼女のくちびるを、紅い色に彩られた左手薬指で塞ぐ俺。

 そして、

「一度だけ使用可能の霊道を通すだけやから、これで上等!」

 現在の俺。周囲から雷の気を集めて、普段以上に龍の気に溢れた俺だから出来る芸当。まして、双方の生命が尽きるまで続く契約に際して開かれる霊道などではなく、これから行う呪法に使用する為に開いた霊道。
 一度だけの使用に耐えてくれたら問題ない。

 刹那、俺の視線の先。闇の向こう側へと続く大地に走る亀裂の周囲に雷光が爆ぜる。朝日が差し込み、闇に覆われた世界から、光り差す世界へとの移り変わりを完全に否定するかのような白い光が踊り狂ったのだ。
 その中心に、迸る雷光を発生させ、周囲の大気をイオン化させる程の高熱を発する存在が再び姿を現す。
 触手の周囲では風が渦巻き、刃として大地を切り裂く。炸裂した土が舞い上がり、触手の周囲に達した土埃は、これもまた一気に昇華からイオン化と言う現象を引き起こす。

 状況は更に危険度を増して行く……。

「配置はこのまま。それぞれが霊力を高めてくれたら問題ない」
【タバサ、頼むな】

 素早く、アリアのくちびるにも左手の薬指で触れ簡易の霊道を開くと同時に、タバサに対して【念話】を送る。
 これは意味不明。但し、彼女にはこれで充分に伝わる。

【龍の巫女たる古き血の一族の末裔(すえ)が願い奉る】

 正面から昇り来る朝日を受け、右手を高く掲げる俺。
 その手の先に顕われる|運命の槍《ロンギヌスの
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