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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第79話 我が前に……
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期の勢いを失った炎の触手をやや下方より薙ぎ払う光の斬撃。この斬撃から感じる彼女の気配。

「無事のようですね、シノブ」

 俺の周囲に集まる少女たちの姿を見つめてから何故か、少しの不満のような色を滲ませながらも、口調は普段の女性騎士の口調で話し掛けて来る蒼い戦姫。但し、次の瞬間には回れ右を行い、正面、やや下方の遙か宇宙の彼方へと繋がる大地の亀裂へとその視線を移す。
 そう言えば、アリアはティターニアとブリギッドに関しては初見でしたか。

 但し、二人……いや、正確には二柱とも尋常ならざる炎の気と大地の気を纏った存在だけに、彼女ほどの能力を示す人間がその正体について類推する事が出来ない訳はないでしょうが。

「みんな、助かったよ。ありがとうな」

 前後左右に存在する少女たちに対して、一括で感謝の言葉を伝えて置く。
 その瞬間。

 上空に集まりつつ有った霊力に明確な方向性と言う物が与えられた。そう、ただ単なる霊力(ちから)の塊……おそらく、精霊の姿を視認出来ない人間では見る事の出来ない存在で有ったモノが、視覚的に確認出来る強烈な蒼白い光へと変わり、その光輝が異界化した世界を完全に包み込んで行く。
 そう、それは、眼を開けて居られなくなる程の強烈な光輝。但し、その光輝から感じるのは眩しさだけではない。包み込むような温かさ。神を前にして感じる厳かな雰囲気。
 そして何より、母の胸に抱かれているような優しさで有った。

 高く……。その霊力の発生源に向けて振るわれた炎の触手の先が閃光を浴びた瞬間。まるで炎が光に溶けて行くかのように消えて行く。
 徐々に領域を広げて行く蒼が、赤で彩られた世界を創りだそうとしていた炎を凌駕して行ったのだ。

 そして、その蒼白き光輝の中で炎の触手が。そして、炎の邪神クトゥグアを讃える異世界の歌声を響かせていた炎もたらすモノが次々と光の粒子……魔力から危険のない粒子へと変換されて行ったのでした。


☆★☆★☆


 光輝以外の攻撃的な現象。轟音を発するとか、衝撃波を発生させるなどと言う事もなく、ただ邪悪な存在のみを消し去る光輝。
 ただ、この光輝に触れた邪悪な存在はすべて光の粒子へと変換され……。

 その一瞬とも、永遠とも感じられる聖なる光が輝いた後には……。

 静寂。

 其処に存在して居たのは通常の夜明けの蒼穹をバックに風を受け滞空する飛竜の群れ。
 やや明るさを増して来た東の蒼穹。

 そして、破壊の傷痕を残す大地の亀裂の向こう側には――――

 その刹那!
 大地から吹き上がるかのように発生した炎の塊が、僅かに明けて行く世界を灼熱の色に染め上げ、再び世界を異界へと導く。
 マズイ、予想よりも召喚の儀式が進行して居た!

 (ザン)
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