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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第79話 我が前に……
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自身が自らの片翼として認めてくれる訳がないでしょうが」

 妙に身体に力を与えてくれる声。更に、気付かない内に縮こまっていた身体が、彼女が発する熱を受けて柔らかく伸びて行く。
 もっとも、現実的に理由を言うのなら、彼女を呼び寄せるだけの余裕がなかったと言うべきなのでしょうが。
 そして、

「男の子ってヤツは、意地と空元気だけで立って居るようなモンですからね!」

 そう叫びながら攻守を一転。双方が回れ右を行い、それまで俺が護っていた正面に彼女……、崇拝される者ブリギッドが。
 そして、彼女が護って居た背後から迫って来る炎の触手を、俺の腰から振り抜かれた一閃が薙ぎ払う。

 二人が交差するその一瞬の隙間に、俺の蒼に変わって仕舞った右目が彼女の頬に浮かぶ表情をはっきりと捉えていた。

「それは、女も同じよ!」

 僅かに微笑みの形が浮かんだ、彼女にしては珍しい柔らかい表情を――――

 それまで……。彼女、崇拝される者ブリギッドが現われるまで、体調的には絶好調ながらも、精神的な部分ではかなり余裕のない状態だったのが、今でははっきりと判る。
 それぐらい彼女の登場は劇的で有り、更に俺に勇気を与えてくれる物で有ったと言う事が。
 そして、更に続く強い言葉。

「それでも、頼られたい相手と言うのも存在している!」

 正面。つまり、先ほどまでしつこいぐらいに俺に対して攻撃を加えて来て居た方向故に、一度の撃退では完全に防ぎ切る事が出来なかった炎の触手を、返す刀で斬り払う崇拝される者ブリギッド。
 彼女の日本刀が巻き起こす炎が、太陽のプロミネンスに等しい熱量を放つ、生きて居る炎クトゥグアの触手の纏いし炎をこの時、凌駕したのだ。
 その瞬間、再び振り返った俺は、其処に有った彼女の左肩に手を置きシルフを起動。

 ここまでの流れるような動きに、まるで状況を合わせるかのように下方から猛烈な熱量を持つ巨大な物体が、先ほど走った亀裂の奥深くに現われたのを感じる。
 しかし、今回は余裕を持った対応。俺自身が下方に向け早九字を放った刹那の後に、俺と完全同期状態のタバサがシルフの能力を行使。有視界の範囲内に瞬間的に転移を実行する。

 早九字により構築された格子状の結界が僅かな……体感的に一秒の数分の一程度の時間を作り出し、その一瞬の隙の内に転移魔法を行使。
 有視界のギリギリの場所に転移した瞬間の俺たちを、イオン化した大気が発生源の雷が襲う。

 しかし、その雷は俺が身体を立てる事で、崇拝される者ブリギッドを襲う事はない。
 そして、その一瞬後に襲い来る熱風はすべて彼女……炎の女神として彼女の職能が弾いて仕舞う。

「そもそも、アイツを呼び出させない為に、この山には外つ国(とつくに)の邪鬼を封じた上で、呪法によ
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