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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第79話 我が前に……
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水を完全に統べる事が出来ずに、反乱に加担した水の精霊王アリトンをそのまま水の精霊王として留任させたのです。ガブリエルの代役に彼女を見立てても何の問題もないでしょう。

 但し、術式が完成するのを待ってくれる訳はない!
 まるで巨大な塔が動いたかのような錯覚と、それが動いたに等しい破壊を周辺にもたらしながら、クトゥグアの残滓たる炎の触手が振り抜かれる。

 俺たちを護る術式は存在しない。

「我が右手にミカエル」

 今度は右。その場に存在する五芒星を起動。今度は燃え上がるような灼熱の赤。
 今、俺の右に立つのはこの世界の炎を統べる存在、崇拝される者ブリギッド。長剣を持ち、炎、南、赤色と関連付けられる熾天使の代役には彼女こそ相応しい。

 しかし!

「壁よ、阻め」

 優しい、しかし、強い(マジャール侯爵夫人)の声が上空より響いたその瞬間。
 やや下方から伸び切るように振り抜かれた触手の前に立ちはだかる防御用の魔術回路。
 それは、先ほど俺とブリギッドが立ち上げ、昇華されながら、更に立ち上げ続けた防御用の結界と同じ経緯を辿り、次々と昇華されながらも、それに倍するスピードで立ち上げられ、そして、炎の触手の侵攻を阻止し続ける。

「我が左手にウリエル」

 そして最後の五芒星は薄い黄色。
 俺の左に立つのはこの世界の大地の精霊を統べる妖精女王ティターニア。

 それぞれの名を呼ぶ毎に活性化して行き、更に霊力を高めて行く俺を取り囲む少女たち。
 それと同時に、何故か紫色の痣状となって居た聖痕からあふれ出す紅い液体。
 どくどくと。どくどくと手首から、足首から。そして、脇腹に付けられた聖痕からあふれ出した紅い液体が、ゆっくりと俺たちの足元。何も足場のない宙空に複雑な紋様を描き出し始めた。

 右手首から流れ出した紅い線がひとつの三角形を。
 左手首からあふれ出した紅い線が今ひとつの三角形を描き出す。

 これは六芒星。ふたつの三角形が重なり、その周りを円が取り囲む、ヘブライの神族が用いる典型的な魔術回路。

 そして!

「我が四方に五芒星が燃え、我が頭上に聖槍が輝く」
【破魔の聖槍を持ちて、我にまつろわぬ者を討たせ給え】

 俺の五芒星小儀式の呪文と、タバサの祝詞が完全に唱和を果たした。
 四方すべての五芒星が神々しいまでの輝きを発し、それを描き出した少女たちが発する凄まじいばかりの霊気が、ラファエルから始まり、ミカエル、ガブリエル、そしてウリエルを経過した後に一度俺に集められ、俺の丹田から脊柱、そして、右琵琶骨を経由した後に聖なる槍へと注ぎ込まれている。
 完全に臨界まで達し、最早振り下ろされ、自らの敵。邪悪な存在をその貫く、その一点のみに特化した聖なる槍が今まさに放たれようと
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