第5章 契約
第79話 我が前に……
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し、自らの身の安全を考慮してから行動するようにするな】
俺に取って彼女が大切な家族なら、彼女に取っても失ってはならない大切な家族だと言う事。
そして、共に大切な家族を失った人間でも有りましたか……。
俺の答えに満足したのか、俺と共に在る少女が小さく、静かに首肯いて答えてくれたのでした。
☆★☆★☆
ふぅんぐぅるるぅ〜るぅいぃぃ むぅむぅむぐるうなふぅぅ く、く、く、とぅぐぁ〜ぁ
周囲に集まって来た炎もたらすモノを一気に浄化。それと同時に燃え続けて居た広葉樹とその下草を鎮火に成功。
しかし……。
大地に倒れ、それでも燃え続けて居た大木から。
大地に降り積もった落ち葉から。
そして、其処かしこに存在している黒焦げの……。一時間前には、確かに生きて、眠りに就いていた生命体の残りから。
正に燎原の火と表現すべき勢いで広がって行く炎の中から新たに現われ出でる炎もたらすモノたち。
一体浄化すれば、炎の中から二体、三体と顕われる状況。ネズミ算式に増えて行く炎もたらすモノの前には、正に焼石に水の状態。
生きている炎クトゥグアの召喚にどの程度の時間を要するのか判りませんが、このままではクトゥグアが召喚される前に、この周囲はすべて灰にされる事だけは間違いない。
そんな、半ば諦めにも似た考えが頭を支配しつつ有った俺。その刹那。
振るわれる紅き奔流。
同時に鳴り響く雷の音と、周囲に満ちる雷の気。
大地より顕われたその巨大な炎を回避出来たのは僥倖で有ったのだろうか。
いや、この皮膚のすぐ下を無数の虫が這いまわっているかのような不快な感触が。胸の奥が不安でざわめくような感覚が……。
そして何より、訳もなく叫び声を上げて、この場にひれ伏さなければならないようなこの異常な神の威圧感が教えてくれたのだ。
恐ろしいほどの速さ。先ほど顕われた時と比べてもその勢いが違い、ソレから感じる強大な熱量が空間を歪ませ、咄嗟に左斜め後方三十メートルの地点にまで瞬間移動した俺の前髪を弄った。
そう。普段よりも分厚く……。自らを護る為に多くの精霊を集めている俺の身に感じるこの驚異的な神威。
間違いない。今、この瞬間、世界は死に向かって進みつつある。
少しずつ異界が近付きつつある事を証明するかのように、神威を増して来るクトゥグア。
大地の亀裂からあふれ出すように現れる炎で形成された触手。それは、太陽表面に発生する紅炎にも似た形状。
超高温により炎の触手が動いた周囲の大気自体がプラズマ化。触手の周辺から発生する雷が大地を。そして、何よりもっとも伝導体として相応しい俺の元へと殺到。
そして、次の刹那。
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