7-3話
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怪物もまた声を殺した―――殺された。
私達を喰い殺すはずだった怪物は、今殺されたのだと…私は麻痺した頭で理解した。
その死神の姿を目にする事すらできずに、その首を刈られたのだと。
ズル…ブチブチッ―――。
一瞬の静寂を置いて響く鈍い音。
首から血が吹き出てくる。
十字架に見立てたような剣は怪物の首を切り裂いた、だが刃がほんの少し両断するに足りなかった。
皮一枚が繋がってる状態の怪物の首は、一拍の間を置いて肉が滑る音と千切れる音を立てながら床に落ちた。
ただの肉塊と化した巨躯が力なく崩れ落ちる。
『…―――』
誰もがその一連に絶句するしかなかった。
あまりにもあっさりで、あまりにも唐突で、ただ見届けるしかなかった。
目を奪われるほどの衝撃。
―――人が、怪物の如き獣を屠った。
たったそれだけの結果が残った。
視線を中心に受ける蒼髪の女性は、間違いなくこの場において獣以上の存在。
彼女は、肉塊の上でやはり体勢を崩さずに緩やかに立ち上がった。
十字架のような剣を下ろし、静かに顔を上げた。
「(青い……目…)」
蒼い髪をさせたその女性は、その目も青かった。
だが…その目は、命を奪った者がするような目とは思えなかった。
機械的に家畜を殺すような目でもなく、快楽で殺す事に悦びを覚える目でもない。
あるのは鋭さ、そして飄々とした瞳。
「(ジェニアリー…さん…)」
ジェニアリー…確かそんな名前だった。
あの怪物達が来る直前まで言葉を交わしていた人が、こうも圧倒的な事を成して見せると、私はどう言葉をかければいいのかわからなくなっていた。
衝撃的すぎて硬直している私は、命を救われた事の感謝の言葉が出てこない。
トン、と軽やかに肉塊から降りたジェニアリーさんの視線は私の方に向いていた。
「さいな―――」
「何なんだお前はっ!?」
ジェニアリーさんが何かを言うよりも先に、張り上げた別の声にビックリさせられた。
その声で硬直が解けた私は、周りを見渡したら……そこで見た物に敬遠を覚えた。
周りの皆が―――遠巻きに彼女を見ていた。
それは感謝の眼差しとは遠い…ジェニアリーさんを“異物”として拒絶し非難しているかのような目。
命を救われたはずなのに、さっきの怪物を見るかのような怯えた瞳をさせながら、ストレスをぶつけるかのように誰かが再び声を荒げた。
「こ…殺したのか!? 殺したのかよ!」
「血が…あんなに血が…絶対死んだだろっ…!」
「なんで女が剣なんか持って……普通じゃないぞッ!」
「大体なんだその蒼い髪はっ…!」
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