月詠に願いを憶う
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ていると一つ声を掛けて徐晃が入ってきた。
「うちの軍師から話は聞いた。……生きる事を決めてくれてありがとう」
言いながら身体を大きく曲げて頭を下げる。感謝と、多分謝罪を込めて。
こちらが何も言えずにいるとすっと顔を上げ、口を開く。
「賈駆、慌ただしくてすまないが少し君の頭脳と経験を貸してほしい」
「……何?」
劉備がまだ来てないからボク達の身柄の行く先は後でということか。しかしこの男はボクに何を求めている。
「董卓を隠しながら戦った君は大陸で三本の指に入る政略家だろう。各諸侯の情報も多く入っていると思う。それを見込んで聞きたい。これから袁家はどう動く?」
自分の事を大きく褒められて少し照れるが思考を開始する。
こいつが気にしているのはこの軍の行く末。現時点で立ちはだかる最大の壁は袁紹。
袁紹はこの戦の総大将となった事でかなりの評価がされるだろう。
多分、袁紹は大将軍の位に抜擢されるはず。そこからどう動くか。
「袁家は連合を組んだ事で自分から帝と都である洛陽の価値を下げたわ。帝が居なくても連合が組まれ、帝がいても洛陽が攻められた。なら次に欲するのは自分達による大陸支配。多分、戦後処理が終わり次第、各諸侯を傘下に置く為に侵略を開始するでしょうね」
間違いなくそう来る。あの欲深い一族が次を求めないわけが無い。
「クク、欲しいのはそんな曖昧な答えじゃない。次の大きな戦がどこで起きるかだよ、賈駆」
徐晃の声を聞いた瞬間、背筋に悪寒が走った。
こいつはやっと戦が終わったのにもう次の戦の事を考えてる。
しかも次の戦がどこで起きるか確信していて、そしてボクの頭では次がどこになるか明確な答えを導き出していると、自分と同じだと分かっている。
「……幽州ね、間違いなく。後背の憂いを断ってから大陸を徐々に呑みこむと思う」
背を伝う汗に不快感を感じながらできる限り平静を装って予想を話す。各諸侯の兵力、財力、統治者の思考、全て繋げるとそれが妥当だし一番的確だろう。
「ありがとう。ならもう一つ。俺達の今回の勲功でどこまで上がれる?」
続けられた質問によって心の臓に冷たい手を這わされているような感覚に陥る。こいつはどこまで予測しているのか。
「……最大で州牧よ。あんたたちの今回の働きを考えるとボクなら間違いなく徐州に置く。陶謙より勢いがあって大陸の民の支持が高い劉備を置いて徐州に活気を与える」
陶謙は少し老いすぎた。子孫にもあまりいい人材はいないし、何より今回の連合に参加しなかった事が大きい。
「……やはりそうなるか」
何やら考え出した徐晃に少し質問を投げる事にした。
「あんたはどこまで読んでるの?」
この大陸のこれからについて。
ボクは無言で思考に潜っている徐晃の答えを焦らず待つ事にした。
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