雛が見つけた境界線
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まってしまったら責任を取る事も出来なくなる。だから秋斗さんはずっと一人で黙って抱え込んでくれてたんだよ」
秋斗さんは桃香様の話の最中も何も言わずにただ沈黙を貫いていた。
「しかし! この方は進んで悪を為す事を認めたという事なのですよ!? そんなこと――――」
その言葉は正しい。正義感と責任感の強い愛紗さんらしい。でも――――
「愛紗さん、私達は何を背負っていますか?」
雛里ちゃんの急な発言に秋斗さん以外の皆がそちらを向く。
「私達には自分の治める地を守る義務があります。簒奪されることから守り抜かなければなりません。公孫賛様の裏の参加理由はそれなんです。今後、幽州の地を戦火に巻き込まないために参加を決めた。乱世を見据えて自分が悪を為すかもしれない事を是としたんです。秋斗さんは公孫賛様と同じ事をしたんです」
公孫賛様は家を守るという意識の強い方で常識がある。正義や悪に拘ることも無くどうすれば自国を守れるか、自国の為になるかを常に考えている人だ。
「他の地の民を助けるため、それは尊くて綺麗な事だ。だがな愛紗、俺達が守るべきなのは……真っ先に自国の民であるべきだ。それが目に入らないなら世に平穏なんざ作れやしない。自国の民を守れない者がどうして他国を助ける事ができるんだ」
厳しく言い放つその言葉は皆の胸を打った。
私達は自国の民である兵を犠牲にしてまで他の国の民の今を助けようとした。
秋斗さんは自国の兵を犠牲にして自分達の国と未来を守ろうとした。
そこが違う。どちらも参加には変わりない。けどこの人と私達の考え方は全く違った。乱世を治める事を考えて一番の方法を取ったんだ。
そして――――
「秋斗さんは未熟な私の代わりに決断をしてくれたんだよ。私達は自分達の国を守るために参加するべきだった。呑みこまれないために、この先に生き残る事ができるように」
彼は桃香様の代わりに全てを背負って決断を下していた。
ああ……ずるい。本当にずるい。雛里ちゃんはきっとこの人を今まで支えてきた。だからあんなに一緒にいたんだ。いつのまにか自分で気付いて、抜け出して、この人と一緒に私達を待っていたんだ。
理想に妄信していた私達は盲目すぎたから。信じてくれなかったわけじゃない。信じているからこそ。自分で答えを見つけないと、壁を乗り越えないと本当の強さなんか手に入らないのだから。
私は今から追いついてみせるよ、雛里ちゃん。
「私達が何を喚いても連合は止まらなかったと思う。そして余計に目をつけられて自分達が第二の董卓ちゃん達になったかもしれない。話し合いで解決するには力が足りない。理想を語るには、今の私達は凄く弱いから」
苦悶の表情をしているが愛紗さんはこれ以上言葉を紡ぐ事はなかった。
「乱世とはこういうモノだ。他を喰らってでも生き残
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