雛が見つけた境界線
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んだ」
死の間際の憎しみの感情など想像すらできない。そこにはどれほどの強い想いがあったのか。……彼はそれを一人で耐えたというのか。
賈駆さんからの悲痛な叫びでさえ私にはあれだけの痛みがあったのに。
ただこの人は私達みたいに正義に溺れていなかった。それが大きいのかもしれない。
「それよりも……全ては董卓との会話でわかっただろう? 俺はお前達と違い……最初からお前達の言うような正義なんざ掲げちゃいない。人を救うため、世界を変えるためにこの軍にいる」
その言葉に愛紗さんがぴくりと反応した。
「……あなたは最初から我らを騙していたのですか?」
虚ろな目をして秋斗さんを見つめる愛紗さんに少し寒気がした。武器があったなら斬りかかるのではないかと思えるほど。
「愛紗! 訂正するのだ! お兄ちゃんは騙したりする悪い奴じゃないのだ!」
突然、何故か鈴々ちゃんが弾けるように食って掛かった。
「お兄ちゃんはバカで、すけべで、でも優しくて、あったかいのだ! 無茶もするけどいっつも皆の事を考えてるのだ! 人を助けたくて仕方ない……いい奴なのだ!」
目に涙を溜めて愛紗さんに詰め寄る。素直な鈴々ちゃんだからこその反応か。愛紗さんはそれを見て瞳に光が戻り、だが苦い表情に変わり、すっと頭を下げた。
「……申し訳ない、秋斗殿」
「謝らなくていいよ、愛紗。お前は正しい。鈴々、俺は……悪い奴だ」
秋斗さんの言葉に鈴々ちゃんが絶望した顔で俯く。
「……お兄ちゃんはいつも心で泣いてたのだ。剣を振る度に、人が死ぬ度に。そんなお兄ちゃんが……悪い奴なわけ……無いのだ」
零れた涙を見て桃香様が鈴々ちゃんを抱きしめる。秋斗さんは目を瞑って無表情、その顔からはやはり感情が読み取れなかった。
「秋斗さん……あなたが目指す世界は私の目指すモノと同じ。だからこそ私達に力を貸してくれてるんでしょ?」
桃香様は凛とした表情で言葉を放つ。
「……その通りだ」
少しの間をおいて彼は返答を口にした。
「なら……愛紗ちゃん。それは騙していたんじゃないよ。私達を思っての事だから」
「どういう事でしょうか、桃香様。」
怪訝な顔をして愛紗さんが尋ねる。
「私達はね。覚悟も無しに自分勝手な正義を振りかざしてこの戦に参加を決めた。どんな事が起こっても対処できるなんて甘い考えを持ってしまった。責任を取る覚悟も無くて、何にも自分達の現状も先の事も考えずにただ単に理想に流されたの」
そこで桃香様は一旦言葉を区切って深く息を吸う。
「私達の目標と、私達が手に入れた家を守るためには参加は避けきれなかった。でも私がまだ未熟で、理想を確固たるものに出来ていなかったから参加を踏みとどまらせるような事を言うのも出来なかった。戦の最中に気付いたとしても、途中で抜けたり、私達が立ち止
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