第四章
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「というか猫の手も借りたいっていうのはね」
「実際に手伝う筈がない相手でもなんだ」
「助けてもらう位に忙しいって言葉なのよ」
「そうだったのね」
「そうよ、けれど実際はね」
現実はです、どうしなければいけないかといいますと。
「自分でしないといけないのよ」
「夏休みの宿題は?」
「宿題だけじゃないわよ」
それに限らないというのです。
「世の中の何でもなのよ」
「自分でしないといけないのね」
「そうよ、何でもね」
それこそこの世のあらゆることがだというのです、自分で全部しないといけないというのです。
「だからお母さんも家事は全部自分でしてるのよ」
「そうだったんだ」
「そうよ、じゃあいいわね」
「書道も絵も図工もなんだ」
「全部自分でしなさい」
光一自身でだというのです。
「何でもしなさいね」
「夏休みの宿題だけじゃなくて」
「そうよ、これからの全部をね」
「そうなんだ、じゃあ」
「他人のことはあてにしないよ」
そして頼らないというのです。
「今回は何もなかっただけましだと思いなさい」
「たわしやむくこが寝てただけだったから」
「そうよ。じゃあ御飯を食べたらね」
「それからまただね」
「宿題しなさい、自分でね」
「そうだね、それじゃあ」
「三十一日までに終わらせるのよ」
夏休みの最後の日までにというのです。
「わかったわね」
「そうだね、苦手なものでも」
「苦手でも何でもしないといけないの」
お母さんは光一にこのこともお話しました。
「それも自分でよ」
「そうしないといけないんだ」
「全く、たわしやむくこがすると思ったの?」
お母さんはここでまた呆れた声で言いました、おかずの鯖の煮付けに箸をつけながらそのうえで言うのでした。
「まさか」
「そう思ったんだけれど」
あの時はそうだったというのです。
「違うんだね」
「たわしが筆なんて持てる筈ないでしょ」
そもそもそれ自体がないというのです。
「むくこもね」
「そういえばどっちも前足だから」
肉球のあるそれです、これではとてもです」
「無理だよね」
「そうよ、無理よ」
これがお母さんの言うことでした。
「絶対にね」
「そうだよね」
「そうよ。どんな時でも冷静に考えてね」
「そうしていかないと駄目なんだ」
「そのことがわかったわね」
「うん、よくね」
「それと自分のことは自分でよ」
お母さんはあらためてこのことも言い加えました。
「そういうことなのよ」
「じゃあ自分でするよ」
光一もこれでわかったのでした、たわしは今もちゃぶ台の上に気持ちよさそうに寝転がっていてむくこも玄関にいます。何でも落ち着いて考えて自分でしないといけないことがわかった光一でした。
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