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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十三話 フェザーン謀略戦(その5)
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いたような部屋にルビンスキーの呻き声だけが響いた。笑った、思いっきり笑った。俺はその声が聞きたかったんだ、ルビンスキー。

「顔を上げなさい」
ルビンスキーがイヤイヤをするように首を振った。リンツに視線を向ける、リンツが慌てて嫌がるルビンスキーの顔を上向かせた。しかし目を合わせようとしない。

「私を見なさい、アドリアン・ルビンスキー」
「……」
「私を見なさい!」
奴の目を見る、明らかな怯えが有った。顔を近づけて低い声で囁いた。

「私を甘く見るんじゃない、分かりましたか」
ルビンスキーが震えながら頷いた。少し威かし過ぎたか……、だがこれで馬鹿な事は考えないだろう……。時刻を確認した、十一時十八分。

立ち上がって全員を見た。皆姿勢を正して無表情に俺を見ている。命令を待つ姿だ。
「撤収します。アドリアン・ルビンスキーを拘束してください。人質として連れて行きます」
リンツがルビンスキーを引き立ててもルビンスキーは抵抗しなかった。良い傾向だ。

「私はどうするのだ、ヴァレンシュタイン」
半分以上諦めの口調でレムシャイド伯が問いかけてきた。まあ人質に取られると思うのは当然だろう。俺もそれを否定はしない、しかし話の持って行き方が有る。この爺様にはもう少し協力してもらわないと……。

「私達と同行してもらいます」
「人質か……」
「いえ、フェザーンは危険です。何処に地球教の人間が居るか分かりません。イゼルローン経由で帝国に戻ってください」

俺の言葉にレムシャイド伯が考え込んだ。それを見たシェーンコップが伯に声をかけた。
「提督の言うとおりですな、我々と同行した方が良い。最悪の場合、連中は閣下を暗殺しその罪を我々に擦り付けるかもしれない」
「なるほど、フェザーンは危険か」

「それも有りますが、地球対策は帝国と同盟がバラバラに行うのではなく協力して行う必要が有ります。そのためには伯の力が必要です。我々がいくら帝国に訴えても帝国はなかなか信用しないでしょう。伯に死なれては困るのですよ」
「分かった、ところで部下達はどうする」
レムシャイド伯が拘束され転がされている部下達を目で指し示した。

「この場で開放します」
俺の言葉に皆が不安そうな表情を見せた。今一つ信用できない、そう考えているのだろう。そして拘束されている帝国人達も妙な目で俺を見ている。

「良いのか?」
レムシャイド伯も皆の不安を感じ取ったのだろう。幾分こちらを気遣う様な表情で質問してきた。良い傾向だな、少なくともチャンスとは捉えていない。協力的だ。

「ええ、彼らにはやってもらいたい事が有ります」
「?」
「ルビンスキーの自宅へ行って欲しいのですよ」
「なるほど、通信室か、それが有ったか……」
「証拠を押さえる必要が有りま
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