第四十九話 準備期間の朝その十二
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それでも右手を挙げてだ、委員に応えたのだ。
「クラスの委員長は」
「そうよ、あんただから」
「委員長は委員長じゃないんだね」
「副委員長よ」
大抵の学校でそうだが八条学園でも男子のクラス委員が委員長であり女子が副委員長になっている。所謂慣習だ。
「私はね」
「けれど副委員長っていう呼び名はな」
「呼びにくいからよね」
「そう、だから皆ね」
「私の方を委員長っていうのね」
「それにそんなキャラだし」
男の委員長よりもだというのだ。
「しっかりしてて真面目で」
「髪型も三つ編みで眼鏡かけててな」
「勉強だって出来るしね」
他の男女の生徒達もここで言う。
「だからな」
「委員長なのね」
「しかも実はスタイルもいい」
「才色兼備で」
「ちょっと、何で私のスタイルのことここで言うのよ」
委員はこのことには顔を赤くさせて言い返す、とはいっても酒で最初から赤くなってしまっているがである。
「私スタイルは」
「身長一五五」
女子生徒の一人が言って来た。
「バスト八五ウエスト五七ヒップ八六」
「確かにいいわね」
「アイドルでもいけるわよ」
「そんなにいいかしら」
自分のジャージの下の胸を見ながらだ、委員長は考える顔になった。
「そんなに」
「いいって、水着の時でもね」
「私達びっくりしたから」
「委員長ってそんなにスタイルいいのって」
「びっくりしたから」
「そうかしら」
そう言われてもだ、首を傾げさせる委員長だった。
「私って」
「いいって、欠点は結構おっちゃこちょいなところだけれどな」
「しっかりしててもな」
「焦ると駄目なタイプだけれどさ」
「それと瞬発力ないけれど」
短距離走やそうしたものが苦手なのだ、短時間で力を出すことが。
「けれどいいよ、委員長」
「面倒見もいいし」
「だから委員長なんだよ」
「うちの委員長がこんなのだしな」
「僕はいい加減だよ」
今にも酔い潰れそうな顔でだ、実際の委員長が笑顔で言う。もう既に半分寝袋の中に入ってしまっている。
「仕事でも何でも」
「あんたはやれば出来るの」
委員はその委員長にむっとした顔で返した。
「というか成績だって私よりいいじゃない」
「そういえばそうかな」
「そうよ、やれば出来るのに」
「だって面倒臭いの嫌いだから」
「あんたみたいなのをね」
どう言うか、委員は委員長にそのむっとした顔でこう言った。
「有能な怠け者っていうのよ」
「それって褒め言葉?」
「一応ね」
それに当てはまるというのだ。
「そうなるわ」
「ふうん、そうなの」
「だから有能な働き者になったら?」
「だから僕はさ」
面倒臭いことは嫌いだというのだ。
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